アンソロピック、目論見書を公開しナスダック上場へ 1〜6月の赤字807億ドルの中身と日本で株は買えるのか

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対話型AI「Claude(クロード)」を開発する米アンソロピックが米国時間の10月26日、米証券取引委員会(SEC)に新規株式公開(IPO)の目論見書を公開で提出した。上場先は米ナスダック市場で、銘柄コードは「ANT」。2026年1〜6月の純損失は807億ドルに上るが、その約9割は企業価値の上昇で膨らんだ帳簿上の評価損だった。日本の個人投資家が株を買えるかどうかは、10月27日朝の時点で国内の証券会社から取り扱いの発表がまだない。
アンソロピックが目論見書を公開、ナスダックに「ANT」で上場へ
提出したのは「フォームS-1」と呼ばれる登録届出書で、投資家向けの目論見書にあたる。アンソロピックは6月1日(米国時間)に、この書類の草案を非公開でSECへ出したと発表していた。非公開の段階では会社として財務の詳細を公表しておらず、草案の数字の一部が報道で伝わるにとどまっていた。10月26日の公開で、数字やリスクの全体像が明らかになった。
上場するのはクラスA普通株で、市場はナスダックの最上位区分「グローバル・セレクト・マーケット」。引受団は米ゴールドマン・サックスと米モルガン・スタンレーが主導し、20社を超える金融機関が名を連ねる。その中には、みずほフィナンシャルグループ傘下の米国法人と、三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の米国法人も入っている。
アンソロピックは2021年に設立された。5月にはシリーズHと呼ぶ資金調達で650億ドルを集め、企業価値は9650億ドルと評価された。設立から5年での上場申請となる。
1〜6月の赤字807億ドルの中身 売上は約14倍に
目論見書によると、2026年1〜6月の売上高は162億8600万ドルだった。前年同期の11億6300万ドルから約14倍に伸び、2025年の通年売上高(約45億9000万ドル)の3倍を半年で超えた。
一方で、同じ期間の純損失は807億4800万ドルに達した。2025年通年の純損失420億ドルの2倍近い額だ。売上が急拡大しているのに、なぜ赤字がこれほど膨らんだのか。
純損失の約9割は現金が出ていかない評価損
答えは会計処理にある。純損失のうち723億8800万ドルは、転換社債などの「公正価値」の変動による損失だった。純損失全体の約9割にあたる。
転換社債は、将来に株式へ切り替えられる権利がついた借金のようなものだ。アンソロピックの企業価値が上がるほど、投資家が受け取る株の価値も上がるため、会社側から見た負債の評価額が膨らむ。目論見書は、損失の主因を発行済みの転換約束手形の公正価値の上昇だと説明している。
つまり、会社の評価が高まったことで計上された帳簿上の損失で、その分の現金が実際に出ていったわけではない。
本業の営業損失は6億9300万ドル
AIサービスを売って得たお金から、開発費や計算資源の費用などを引いた本業の損益は、1〜6月で6億9300万ドルの営業損失だった。807億ドルという純損失と比べると、桁が二つ小さい。
見出しで「赤字807億ドル」と伝えられる数字は純損失を指し、本業の赤字とは大きく違う。目論見書は、AIの開発と運用に必要な計算資源やインフラの費用が増え続け、当面は営業費用の最大の項目になるとの見通しも示した。
アンソロピックの上場はいつ? 公開価格・株数は未定
目論見書では、売り出す株数と想定価格の範囲(仮条件)が空欄のままだ。調達額や上場日も書かれていない。
米国での報道では、11月中旬の上場を目指しているとされ、11月16日の週という日程も伝えられている。調達額は1000億ドルを超える可能性があり、企業価値は1兆5000億〜2兆ドルに達する可能性があると報じられている。ただ、いずれも会社の発表ではなく、市場の状況で日程や条件は変わり得る。10月中旬には、投資家の間で見込む企業価値が、それまでの約2兆ドルから約1兆5000億ドルに下がったとの報道も出ている。
調達額が1000億ドルを超えれば、6月にナスダックへ上場した米スペースXの約750億ドルを上回り、史上最大規模のIPOになると報じられている。資金の使い道について目論見書は、計算資源やインフラへの投資を含む一般的な事業目的に充てると記した。現時点で、重要な買収や投資について合意や約束はないとしている。
アンソロピック株は日本で買えるのか
結論からいうと、10月27日朝の時点で、国内の証券会社がアンソロピック株の取り扱いを発表した事実は確認できない。手がかりになるのは、4カ月前のスペースXの例だ。
上場前のIPO株に日本から申し込めるか
スペースXは5月27日、日本で有価証券届出書を提出した。これで日本の投資家も、みずほ証券、楽天証券、SBI証券の3社を経由して上場前の株に応募できるようになった。3社を経由した国内の売り出しで約21億8500万ドルを集め、SBI証券では申し込みが多く抽選になったと報じられた。
楽天証券は6月1日から、海外でも同時に売り出す「グローバル・オファリング」の米国株のうち、自社で扱う銘柄に限ってIPOの抽選申し込みを受け付ける仕組みを始めている。
アンソロピックについても、日本の投資家から資金を集める見通しだと報じられている。だが、日本での有価証券届出書の提出や、証券会社ごとの受け付け方法、申込期間はまだ公表されていない。日本から申し込めるかどうかは、今後の正式な発表を待つ必要がある。
上場後に米国株として売買できるか
上場した後は、米国株を扱う国内の証券会社で売買できるのが一般的な仕組みだ。スペースXでも、日本の投資家は上場初日から国内の証券会社で売買できた。ただ、どの証券会社がアンソロピック株をいつから扱うかは、各社の発表を確認する必要がある。
楽天証券は米国株IPOの案内で、すべての銘柄が値上がりするわけではなく、上場後に株価が下落する場合もあると注意を促している。
Claude利用者への影響は 目論見書から見える範囲
上場を控え、Claudeを使う個人や企業への影響が気になる人もいるだろう。10月27日朝の時点で、上場に伴うサービス内容や料金の変更について、アンソロピックからの発表は確認できない。
目論見書は、顧客を「企業」と、個人の上級利用者を指す「プロシューマー」の二つに分けて説明している。年間10万ドル以上を支払う顧客は、9月30日時点で1万1900を超え、1年前の950超から10倍以上に増えた。
アンソロピックは上場後も「パブリック・ベネフィット・コーポレーション(公益目的会社)」の形を続ける。利益だけでなく社会への利益も目的に掲げる会社の形で、経営を見守る「長期利益信託」の仕組みも残す。
リスクの説明も長い。目論見書は、AIモデルが停止に抵抗しようとしたり、脅迫に似た振る舞いをしたりするなど、自己保存的な振る舞いを示す可能性があると記した。開発する側が自らこうした点を書き込んだことも、投資家の判断材料になる。
オープンAIより先に上場、AI企業の資金集めの試金石に
競合のオープンAIも6月に非公開でIPOを申請したが、上場は2027年になると報じられている。アンソロピックは、ライバルより先に株式市場へ出る。
AIへの巨額投資を巡っては市場に警戒感も広がる。アンソロピックの上場は、投資家のAIへの意欲を測る試金石になるとの見方も出ている。公開価格の仮条件や日本での販売の有無が決まれば、上場の日程も具体的になる。
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[文/構成 by ライター 飯田タツヤ]








































































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