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ポイ捨て罰金”世界の相場”はいくら?シンガポール23万円、香港5.8万円…渋谷の2000円は安すぎるのか

ポイ捨て罰金”世界の相場”はいくら?シンガポール23万円、香港5.8万円…渋谷の2000円は安すぎるのか

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

東京・渋谷区が2026年6月1日から、ごみのポイ捨てをした人にその場で2000円の過料を徴収し始めた。先行するシンガポールは初犯でも裁判所での最高罰金が約23万円に達し、両者の差は100倍を超える。SNSでは「外国人観光客への抑止力にならない」と疑問の声が広がっており、”世界の相場”との格差が浮き彫りになった。

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渋谷区で6月1日、過料2000円の即時徴収が始まった

東京・渋谷区で2026年6月1日、ごみのポイ捨てをした人にその場で2000円の過料を科す新ルールが施行された。区の指導員が区内全域を24時間体制で巡回し、ポイ捨てを現認した瞬間に現金またはキャッシュレスで徴収する。捨てた後にごみを拾い直しても過料は免れられない。私有地も例外ではなく、区内すべての土地が対象エリアだ。

条例改正は2025年12月に渋谷区議会で議決した。背景には、コロナ禍以降の来街者増加でポイ捨てごみが急増し、啓発活動だけでは「美しく健全な環境を維持できなくなった」という区の判断があった。区の担当者は「膨大な人が来る渋谷で実効性を確保するため」と説明する。

実は、条例改正前から渋谷区にはポイ捨てを禁じる規定が存在した。違反すれば2万円以下の罰金だったが、これは刑事罰で捜査と裁判を経る必要があり、「実績はほぼなかった」と区は認める。今回の改正で刑事罰から行政罰(過料)に転換し、指導員が現行犯でその場で徴収できる仕組みに変えた。先行して同様の過料制度を導入している路上喫煙では、前年度の処分件数が約2万〜2万7000件に上る。

条例にはもう一つの柱がある。コンビニエンスストア、飲食テイクアウト店、自動販売機を運営する事業者にごみ箱の設置を義務付け、設置しない場合は5万円の過料を科す規定だ。2025年に区が行った調査では、飲料テイクアウト店のごみ箱設置率は47%、キッチンカーは50%と、約半数にとどまっていた。

関連記事:渋谷のポイ捨て”半数以上が外国人”の衝撃 過料2000円は本当に観光客から徴収できるのか

シンガポールは初犯で最大23万円、3回目以降なら115万円

渋谷の2000円を”世界の相場”と比較すると、その差の大きさが際立つ。

清潔な都市として知られるシンガポールは、罰則の厳格さで群を抜く。シンガポール国家環境庁(NEA)の公式発表によれば、Environmental Public Health Act(環境公衆衛生法)のもと、初回の有罪判決では最高シンガポールドル2000ドル(約23万円)の罰金が科せられる。2回目は最高4000ドル(約46万円)、3回目以降は最高1万ドル(約115万円)と、違反を重ねるたびに金額が跳ね上がる仕組みだ。なお、現場での行政的な構成罰金(composition fine)は初犯300ドル(約3.5万円)で即座に課せられる。

日本の外務省も海外安全ホームページで、シンガポールのポイ捨て罰金を「初回2000ドル(約23万円)」と案内する。渋谷区の2000円との差は115倍だ。

金銭罰だけではない。繰り返し違反した者は「是正作業命令(CWO)」に服することになる。黄色いベストを着て公共の場でごみ拾いをする制度で、法律違反者であることが一目でわかる。2017年から2021年の5年間でNEAが発行したポイ捨て・高層階からの投棄の摘発件数は年平均約2万7200件に上り、厳格な取り締まりが実際に機能していることを示す。

フランス・パリは固定罰金€135、重度違反では大幅に増額

欧州では国ごとに仕組みが異なる。フランスの場合、フランス政府公式サービスサイト(service-public.gouv.fr)によれば、路上への一般的なごみの放棄に対する固定罰金(amende forfaitaire)は135ユーロ(約2.2万円)と定められている。45日以内に支払わなかった場合は375ユーロ(約6.1万円)まで引き上げられ、さらに車両を用いて廃棄物を投棄した場合は最大1500ユーロ(約24万円)に達するほか、車両没収の対象にもなる。刑事罰の領域に入ると、Code Pénal(刑法典)の定める上限は750ユーロ(約12万円)規模に及ぶ。

パリ市はさらに独自の措置を加えており、2015年10月から清潔に関するあらゆる不作法行為(タバコ吸い殻、ごみのポイ捨て、犬のフン放置等)に対して68ユーロ(約1.1万円)の固定罰金を導入した。タバコ吸い殻もそれ以前の35ユーロから引き上げられた。

これはそれ以前の35ユーロから倍近くに引き上げた数字で、導入時、パリ市内には約100人の監視員が配置され、取り締まりにあたった(2015年時点)。段階的に罰金は積み上がる設計で、フランス国家規定では45日以内未払いで€375(約6.1万円)、裁判官の判断で€750(約12万円)、さらに車両を用いた不法投棄では最大€1,500(約24万円)と車両没収まで及ぶ。

ニューヨーク50ドル、香港5万8000円…主要都市の比較

アメリカのニューヨーク市では、初回のポイ捨てに対する罰金は50ドル(約7300円)で、2回目以降は300ドル(約4.4万円)まで上がる。香港では2023年に罰金額を引き上げ、初犯で3000香港ドル(約5.8万円)となった。以下の表に主要都市の罰金水準をまとめた。

都市・国初犯の標準的な罰金額日本円換算(目安)備考
シンガポールS$300(行政)/S$2,000(裁判所・最高)約3.5万円〜約23万円3回目以降は最高S$10,000(約115万円)
フランス(パリ)€68(タバコのみ)/€135(一般ごみ・固定)約1.1万円〜約2.2万円未払い・重度違反は€375〜最大€1,500
香港HK$3,000約5.8万円2023年に引き上げ
ニューヨーク(米)$50〜$300約7,000円〜約4.4万円2回目から$300に跳ね上がる
ロンドン(英)£50〜£150約9,500円〜約2.8万円地方自治体が金額を設定
渋谷(日本)2,000円2,000円2026年6月1日施行

「外国人には何の抑止力にもならない」という声の背景

SNSには、「日本に旅行に来る外国人にとって2000円は何の抑止力にならないでしょう」「やらないよりやった方がマシですが、安すぎるので抑制になるかどうかは別だと思います」といった投稿が相次いだ。渋谷には日本人含め年間数億人規模の来街者があり、訪日外国人も多く含まれるとされ、所得水準の異なる多様な観光客に同額の過料を適用することへの疑問は根強い。

なぜ2000円という金額になったのか。渋谷区はQ&Aでこう説明する。「過料徴収によるポイ捨て行為への抑止効果および再発防止効果が十分に期待でき、かつ過料徴収における違反者間の公平性の確保および現場での効率的な手続きの観点から、過料の金額は2000円とすることが最も妥当であると判断した」。金額の合理性よりも、運用の現実的な実行可能性を優先した判断だといえる。

国内他都市の先例も参考になる。大分県由布市はすでにポイ捨てに罰金2000円を科しているが、注意されてごみを拾い直せば徴収しない運用をとり、施行開始から約1年で徴収実績は0件だった。一方の渋谷区は「拾い直しても過料は取る」という姿勢を明確にしており、実効性への考え方が異なる。

先例シンガポールの成功が示すもの、渋谷に残る課題

渋谷区がモデルとしてイメージしているのはシンガポールだ。同国は1968年の「Keep Singapore Clean」キャンペーンに始まり、1987年制定の環境公衆衛生法(EPHA)のもとで厳格な反ポイ捨て政策を運用し続け、世界有数の清潔な都市という評価を確立した。法整備と厳罰化が長期的に機能した成功例として、世界の都市計画の場でしばしば参照される。

だが課題も残る。渋谷では2001年頃から、テロ対策を名目に駅や公共施設のごみ箱が次々と撤去された経緯があり、ごみを捨てたくても捨てられない環境が長く続いた。今回の条例改正ではその反省も踏まえ、事業者へのごみ箱設置義務化を同時に盛り込んだ。「捨てる場所をつくらずに捨てるなと言う」という批判を先に封じた構えだ。

罰金の絶対額よりも、取り締まりの見える化と継続性が重要だという見方もある。渋谷区は指導員による24時間巡回を既に路上喫煙対策で定着させており、年間2万〜2万7000件という処分実績がある。同じ仕組みをポイ捨てに横展開する今回の施策が、金額の小ささを補う継続的な抑止力となるかどうか。成果は今後の統計が示す。2000円という数字が世界水準に近づくかどうかは、まずこの一歩がどう機能するかにかかっている。

[文/構成 by さとう つづり]

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