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朝倉かすみさん、直木賞受賞作『けんぐゎい』は自身初の時代小説 「圏外」の古い発音がタイトルの由来

朝倉かすみさん、直木賞受賞作『けんぐゎい』は自身初の時代小説 「圏外」の古い発音がタイトルの由来

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作家の朝倉かすみさん(65)の「けんぐゎい」が7月15日、第175回直木賞に決まった。3度目の候補で念願の初受賞となった。タイトルは「圏外」を意味し、現代の共通語からほぼ姿を消した古い発音をあえて採用したという。

朝倉かすみさん、3度目の候補で初受賞

2026年7月15日、東京・築地の老舗料亭「新喜楽」で第175回直木賞の選考会が開かれ、朝倉かすみさん(65)の「けんぐゎい」(光文社)が受賞作に決まった。同日夜、東京・内幸町の帝国ホテルで記者会見が開かれ、朝倉さんは「ドキドキしてます」と切り出し、「ほめていただけたことがうれしいし、直木賞をいただけたことは光栄です」と喜びを語った。

直木賞候補は今回で3度目。第161回の「平場の月」、第172回の「よむよむかたる」ではいずれも受賞を逃しており、今回が悲願の初受賞となった。65歳での受賞は、直木賞史上、女性では最年長という。

40代でデビュー、重ねた候補歴

朝倉さんは1960年、北海道小樽市生まれ。現在は札幌市を拠点に活動する。2003年に「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞を受賞し、2005年には「肝、焼ける」で単行本デビューを果たした。2009年の「田村はまだか」で吉川英治文学新人賞、2019年の「平場の月」で山本周五郎賞を受賞するなど、現代の人間関係を丁寧に描く作風で評価を重ねてきた。

「けんぐゎい」は、そうした作風から一転、初めて挑んだ時代小説だ。舞台は江戸後期の文政年間。会見では「現代小説のように書けないってところが勉強不足なのもあって、うまく書けなくて。どうしよう?、どうしよう?と思いながら一生懸命書いた感じ」と、慣れない執筆を振り返った。

もともと落語や講談を好み、時代小説への関心は以前から持っていたという。Billboard JAPANのインタビューでは「話芸の魅力なんだと思います。音で聞く言葉の面白さというか」と、言葉の響きそのものへの愛着を語っている。当初は幼くして離れ離れになった双子の姉妹をめぐる短編として書き始めたが、女性たちが身を寄せ合う居場所ができあがるまでを描くうちに、短編の枚数には収まらなくなったそうだ。

タイトル「けんぐゎい」、”圏外”に重ねた古い響き

タイトルの「けんぐゎい」は「圏外」を意味する言葉だ。発音自体は現代と同じ「けんがい」だが、表記には現代の共通語からほぼ姿を消した古い発音の「ぐゎ」を使っている。日本語にはかつて「か・が」行の音に唇を丸める響きを加えた「くゎ」「ぐゎ」という発音があり、江戸から明治にかけて徐々に「か・が」に統一されて姿を消していった。今も一部の方言に残るこの古い発音を、朝倉さんは「圏外」という言葉に重ねてみせた。

朝倉さんはBillboard JAPANのインタビューで、圏外に置かれた人々を描く狙いについて「今までもずっと、ちょっと弱い立場の人とか、少数の人とか、そういう人たちのことを書くことが多かったので、今回はそれをもっと思い切って振っていきたいなと思った」と明かしている。

物語は、幼いころの疱瘡(天然痘)で顔や体に痘痕が残った姉ふゆと、整った容姿を持つ妹りよの姉妹が軸となる。父を早くに亡くした2人はそれぞれ奉公に出され、ふゆは手習師匠のもとで才覚を発揮していく。しかし師匠の養子から暴力を受けて身ごもり、人生は大きく揺れる。そこで出会った女性の医者との縁をきっかけに医術を学び、自分と同じように「圏外」へ追いやられた女性たちが身を寄せ合う居場所をつくっていく。

見た目で値踏みされる理不尽さ、女性の体をめぐる抑圧、男性中心の秩序といった問題意識が、時代小説の体裁を借りて浮かび上がる。朝倉さんはRealSoundのインタビューで「圏外の人たちの人生を逆転させたかった」と語っており、理不尽に翻弄されてきた女性たちの人生を転じさせることに主眼を置いたという。

受賞会見、驚きと本音

朝倉さんは、候補になった瞬間を振り返り「本当にうれしくて泣いちゃった。結構な号泣レベルで泣いてしまって、ここがピークだなというくらいの感情の高ぶりがあった」と述べた。それだけに、初受賞の実感はゆっくりと湧いてきたようだ。「夢中で毎回書いていた感じ。こんなに好きに書いて本にしてもらえたのが、すごくうれしかったです」と笑顔を見せた。

40代でデビューした朝倉さんは、かねて「老婆作家になりたい」と公言してきたという。65歳での受賞について問われると「それはものすごくうれしい」と短く答え、会場を和ませた。

同時発表の芥川賞、候補に残った顔ぶれ

同時に発表された第175回芥川賞は、小砂川チトさん(36)の「ゾンビ回収婦」(講談社)が受賞した。AIに仕事を奪われた女性が、仮想空間でゾンビの亡骸を回収する仕事に就くという設定の作品だ。

直木賞では、お笑いコンビ・オードリーの若林正恭さん(47)による初小説「青天」(文藝春秋)も候補に残ったが、受賞には至らなかった。選考委員は浅田次郎氏、角田光代氏、京極夏彦氏、桐野夏生氏、辻村深月氏、林真理子氏、三浦しをん氏、宮部みゆき氏、米澤穂信氏の9人が務めた。選考の詳しい評は、8月21日発売の「オール讀物」9・10月合併号に掲載される予定だ。

贈呈式は来月、東京都内で開かれる見通し。賞金は100万円となる。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

寄稿者

MEDIA DOGS 編集部
メディアドッグス株式会社のMEDIA DOGS 編集部チーム。インターネットマーケティングに約10年携わるメンバーで編成し、企画・取材・執筆から公開後の改善まで一貫して担当。「出会いを、設計する。」のもと、人と企業が正しく出会える場をつくるために、一次情報の確認とファクトチェックを徹底。情報をわかりやすく誠実に届け、読者の疑問を解決します。

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