給食エプロン、アイロンは必要かで保護者の本音が割れる 衛生面の効果と家庭負担の論拠を整理

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給食当番のエプロンにアイロンをかけるかどうかで、保護者の間で意見が割れている。かける派は殺菌や次の当番への配慮を理由に挙げる一方、かけない派は素材の進化や共働き家庭の負担を指摘する。柔軟剤の香りによる体調不良、いわゆる香害も新たな論点に加わり、一部自治体は個人エプロンの持参を認め始めた。
「かける」「かけない」に分かれる保護者の本音
小学校の給食当番が着るエプロンや白衣を、洗濯後にアイロンで仕上げるかどうかを巡り、保護者の間で意見が分かれている。多くの学校では給食当番用のエプロンをクラス単位で共有し、1週間交代で家庭に持ち帰って洗濯する仕組みが続いてきた。その最後の一手間としてアイロンがけを続ける家庭がある一方、かけずに済ませる家庭も増えている。
かける派の理由として目立つのは、熱による殺菌や消臭への期待、そして次に着る子どもへの配慮だ。東海地方の40代の母親は、9年間欠かさずアイロンをかけ続けてきたとAERA with Kids+の取材に明かした。「ちゃんとアイロンがけまでやりました」という気持ちを込め、次の当番者に良い状態で渡す工夫を続けてきたという。
一方、かけない派の背景にあるのは素材の進化と時間的な余裕のなさだ。岩手県の中学1年生の母親は、長年の習慣でアイロンをかけていたが、周囲がかけていないことに気づいてやめた。担任からも「かけなくていいです」と伝えられたといい、素材の進化でしわになりにくくなったことを理由に挙げる。
殺菌効果の根拠と法令上の位置づけ
かける派の主張の中心にあるのが、アイロンの熱による殺菌効果だ。佐世保市教育委員会は市民からの意見に対し、アイロンがけには殺菌・消臭・防虫の効果があると考えられると回答している。家庭用アイロンの温度設定は低温でも80〜120度、高温では180〜210度に達し、スチームの温度もおよそ100度とされる。
ただし、この効果を検証した学術的なデータは見当たらない。一般的な熱消毒では、対象を一定時間にわたり高温にさらし続けることが条件になる場合が多く、短時間かつ布の部分によって当たり方が変わる家庭でのアイロンがけが、同じ水準の殺菌効果を発揮するかどうかは明確でない。自治体の回答も同様の説明にとどまり、殺菌の程度を数値で示したものではなかった。
法令上の位置づけも整理しておきたい。学校給食法に基づく学校給食衛生管理基準は、調理施設の衛生管理だけでなく、教室での給食当番活動についても、学級担任等が児童生徒の衛生的な服装や手指の洗浄状況を毎日点検し、清潔な白衣やマスクの着用を指導するよう求めている(文部科学省「食に関する指導の手引」第5章)。ただし、そこで求められているのは「衛生的な服装」であって、洗濯後に必ずアイロンで仕上げることまでを法令や国の基準が一律に定めているわけではない。エプロンを洗濯後にアイロンで仕上げるという具体的な方法は、各学校やPTAの慣習として続いてきたものだ。
アンケートが映す家庭の実態と負担
ママスタセレクトが行った読者アンケートでは、家族の洗濯物と分けずに洗い、アイロンはかけるという家庭が75%と最も多かった。「アイロン殺菌」への期待を理由に挙げる声が目立つ一方、あえて分けて洗い、アイロンもかける家庭は13%だった。「次の子に申し訳ない」という配慮や、柔軟剤の香りを気にする声が理由として挙がっている。
アイロンをかけないと答えた家庭も合わせて12%あった。内訳は、家族の洗濯物と分けずに洗ってアイロンはかけない家庭が10%、あえて分けて洗ってもアイロンはかけない家庭が2%だった。「エプロンが個人持ちになったのでやらなくなった」という回答や、香害対策と素材の進化を組み合わせた判断が背景にある。
共働き家庭の時間的な負担も、かけない派の根拠として繰り返し挙がる。総務省統計局の令和3年社会生活基本調査によると、共働き世帯における6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事関連時間は、2021年時点で夫が1時間55分だったのに対し、妻は6時間33分に上る。2006年時点では夫59分・妻5時間37分であり、この15年で差は縮まったものの、妻の負担は今も夫の3倍を超える。エプロンのアイロンがけも、この家事負担の一部として語られることが多い。
香りの問題という新たな争点
ここ数年で浮上してきたのが、柔軟剤や洗剤の香りによる体調不良、いわゆる香害だ。新潟県立看護大学の永吉雅人准教授が2021年に行った調査では、小学5年生と中学2年生それぞれ約300人を対象に、香りで体調不良を感じた経験を尋ねた。結果は小学5年生で約1割、中学2年生で約2割に上り、体調不良を感じたタイミングとして給食当番のエプロン着用時を挙げる児童生徒が目立った。
消費者庁は2021年、文部科学省・厚生労働省・経済産業省・環境省と連名で、香りへの配慮を呼びかける啓発ポスターを作成し、2023年7月には改訂版を公表した。「その香り、困っている人もいます」と題し、香りの感じ方には個人差があり、自分にとって快適な香りでも困っている人がいることへの理解を求めている。
香害への対応として、給食当番のエプロンを共用から個人持ちに切り替える動きも出てきた。福井市教育委員会は2024年7月、「香害」への配慮から、学校ごとの判断で個人エプロンの使用も認めるよう各校に通知した。
個人持ち容認の広がりと今後
東京都練馬区では2025年10月1日の区議会決算委員会で、岩瀬たけし区議が個人エプロンの使用を認めるよう訴えた。区議は、柔軟剤や洗剤の香りで体調不良を訴える子どもがいることに加え、貸与された白衣の洗濯やアイロンがけに対応できない家庭があること、汚れた白衣を理由にいじめが起きたケースがあることを挙げた。
区はこれに対し、香りへの敏感さや家庭の事情など、共有の白衣を使うことが難しい子どもには本人専用の白衣か個人購入のエプロンの使用を認めると答弁した。これまでは香害による健康影響を訴えた場合に限っていた対応を広げ、保護者にも周知していくとしている。区が白衣の購入に充ててきた費用は年間350万円から400万円に上るといい、個人持ちを容認する動きは学校側の費用負担にも影響しうる。
エプロンを貸与制のまま続ける学校からは、個人ごとに形や素材が異なると衛生面の管理が難しくなるという懸念も出ている。佐世保市教育委員会は、児童が自分のエプロンを用意した場合、形状や素材のばらつきに加え、頭を覆う布から髪の毛が食品に混入するリスクを挙げ、当面は貸与を続ける考えを示した。今後については、しわになりにくい素材のエプロンを購入する動きが広がっており、アイロンがけそのものを不要にする形で決着する学校も出てきそうだ。
かける派とかけない派、どちらが正しいという単純な話ではない。衛生面の考え方と家庭の負担、そして香りへの配慮という複数の論点を、学校ごとにどう調整していくかが問われている。
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]
































































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