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BeRealとはどんなアプリ?”なにげない1枚”の撮影でキャリアを壊す若手社員が続出のワケ。

BeRealとはどんなアプリ?”なにげない1枚”の撮影でキャリアを壊す若手社員が続出のワケ。

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

1日1回、ランダムな通知から2分以内に”無加工の写真”を投稿するSNS「BeReal」。日本では550万人が利用し、ユーザーの8〜9割以上が14〜27歳のZ世代で占められる。2026年4月以降、勤務中の撮影で企業の機密情報が流出する事故が少なくとも40件発生。銀行の顧客情報から牛丼チェーンの売上データまで、”なにげない1枚”が若手社員やアルバイトのキャリアを直撃する事態が続く。

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2分で撮れ、加工するな――BeRealの仕組み

BeRealは2020年、フランスで生まれた写真共有アプリだ。元GoPro社員のアレクシ・バレイヤとケビン・ペローが開発し、2024年6月にフランスのモバイルゲーム大手Voodooが約5億ユーロ(約844億円)で買収した。

仕組みはシンプルだ。1日1回、全ユーザーに同時に通知が届く。届いた瞬間から2分以内に、スマートフォンの前面と背面のカメラで同時に撮影して投稿しなければならない。フィルターも加工も使えず、投稿しなければ友人の写真を閲覧できない仕組みだ。

InstagramやTikTokのように”映え”を競う必要がなく、飾らない日常を共有するコンセプトがZ世代の支持を集めた。日本国内の月間アクティブユーザー数は2026年1月時点で550万人に達し、運営側の媒体資料によればユーザーの約97%が14歳から27歳のZ世代を中心に構成される。第三者調査では2024年時点で83%とされており、若年層への集中が一段と進んでいる。大学生の利用率は約6割。LINEに次ぐコミュニケーション手段として定着しつつある。

だが、この”リアルさ”が職場で牙をむく。

40件超の情報流出――2026年春に何が起きたか

2026年4月以降、5月12日までの約1か月半の間に、BeRealを通じた企業情報の流出がXなどで少なくとも40件確認された。異常なペースだ。

最も大きな波紋を呼んだのは西日本シティ銀行の事案だ。2026年4月29日夜、同行下関支店の行員が執務室内でBeRealを撮影し投稿した。ホワイトボードや書類、PC画面が映り込み、4月30日の銀行発表時点では顧客7名の氏名の流出が確認されていたが、追加調査により5月12日時点で個人8名(うち1名は住所を含む)と法人19社の名称・業務目標まで外部から閲覧可能だったことが判明した。

投稿はXで拡散され、閲覧数は1042万回を超えた。村上英之頭取は5月12日の決算会見で陳謝し、全店舗で私用スマートフォンの持ち込みを禁止する措置を発表している。

関連記事:西日本シティ銀行”BeReal投稿”で顧客情報ダダ漏れ…頭取謝罪に「緊張感なさすぎ」「悪気ないのが一番怖い」

被害は銀行にとどまらない。仙台市の市立小学校では4月20日、20代の女性教諭が自宅からBeRealに投稿した写真に、職員会議用システム「Google Classroom」の画面が映り込んだ。学校名や同僚教諭の氏名が流出し、仙台市教育委員会が翌21日に事案を公表する。教諭は「通知が来て深く考えずに投稿した」と説明した。

NTT東日本では、女性社員がBeRealに社内のシフト表や部署予定表を繰り返し投稿していたことが4月に発覚した。画像には日立製作所など取引先の名称まで映る。

5月に入ると、牛丼チェーン松屋でも同様の事態が起きた。アルバイト従業員が店舗のバックヤードでBeRealを使い、パソコン画面に表示された売上高や客数データがXに拡散される。松屋フーズは「厳正な処分」を下す方針だ。

なぜ”身内向け”の投稿が漏れるのか

BeRealには「友達の友達」にも投稿が見えるフィードがある。ユーザーの平均友達数は約30人だが、その先の友達の友達まで含めれば、閲覧可能な範囲は数百人規模に膨らむ。

「親しい人にしか見せていない」。この思い込みが落とし穴だ。デジタルリスク対策を手がけるエルテスが2026年5月12日に公表した調査によると、20代ビジネスパーソンの62.9%が「仕事や職場に関する情報をSNSに投稿した経験がある」と回答した。一方で20代の91.4%が非公開設定で利用しており、「クローズドだから安全」という誤認が漏洩の温床になる。

西日本シティ銀行や仙台市の教諭の事案では、閲覧権限のあった「友人」か「友人の友人」がスクリーンショットを保存し、Xに転載した。産経新聞は「24時間で消えるから大丈夫」という認識の甘さを指摘している。BeRealの投稿は24時間後に非表示になるが、その間にスクリーンショットを撮られれば永久に残る。消えるのは投稿だけで、情報は消えない。

“2分の焦り”が判断力を奪う構造

なぜ、勤務中に社内で撮影してしまうのか。

NHKの報道で専門家は「あせらされる仕組み」と表現した。通知から2分以内という制限時間が、周囲の確認を省略させる心理的なトリガーになる。J-CASTニュースの取材に応じた識者は「脊髄反射で動いてしまう」と語った。

デュアルカメラの構造も盲点だ。ユーザーは前面カメラの自分の顔に意識を集中させる。その間、背面カメラが捉えるPC画面やホワイトボードへの注意はおろそかになる。セルフィーを撮っているつもりが、背後の機密情報を世界に公開していた。そんな構図が何度も繰り返される。

ITmediaは2026年5月の記事で、この春に入社したばかりの新入社員による情報漏洩が集中していると報じた。社会人経験が浅く、守秘義務の重みを実感できていない若手が、学生時代と同じ感覚でBeRealを使い続ける。企業側のSNS研修が追いついていない現実が浮き彫りになった。

採用担当者の4人に1人がSNSを見ている

影響は在職中の処分だけでは終わらない。

リファレンスチェックサービス「back check」を提供するROXXの調査では、WEB/SNS調査の手法で実施したコンプライアンスチェックのうち18.5%が「懸念あり」と判定された。

SNS投稿を理由に内定取り消しを行った企業の存在も、複数の人事系メディアで報告されている。BeRealの投稿そのものは24時間で消えても、Xに拡散されたスクリーンショットは”デジタルタトゥー”として残り続ける。転職活動の際に過去の炎上歴が発覚し、採用を見送られた事例も出ている。

1枚の写真が、数年後のキャリアまで左右するのだ。

企業の対応――スマホ禁止は解決策になるか

西日本シティ銀行が導入した「私用スマートフォンの執務室内持ち込み禁止」は、金融業界に波紋を広げた。日本経済新聞は5月12日付で同行の措置を報じ、他の金融機関にも同様の動きが広がる見通しだ。

だが、スマホの全面禁止には限界がある。ITmediaは「SNS禁止令だけでは根本的な解決にならない」と指摘した。読売新聞も5月2日付の記事で、企業の内部情報がSNSで流出する事態が相次いでいると報じ、「仲間うちだけ」「24時間で消える」という誤った安心感への対策が急務だと伝える。

エルテスの調査では、ビジネスパーソン全体の43.3%が仕事や職場の情報をSNSに投稿した経験があると答えた。スマホを取り上げても、根本にある「何が機密情報にあたるのか」という認識のギャップは埋まらない。

FNNは仙台市の教諭の事案を報じた際、専門家の「新社会人の安易なSNS投稿に注意を」という呼びかけを紹介している。入社時のSNSリテラシー研修を義務化する企業も出始めたが、BeRealのように次々と新しいアプリが登場する中で、個別のサービス名を挙げた禁止リストでは追いつかない。

求められるのは、「なぜ投稿してはいけないのか」を理解させる教育だ。通知が鳴っても、職場では撮らない。背面カメラに何が映るか、投稿前に確認する。当たり前のことが、2分間の焦りの中で忘れ去られている。

[文/構成 by さとう つづり]

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