秋田犬「ゆめ」死亡していた――プーチン大統領に贈呈から13年、ロシア大統領府がひっそり認める「悲しいお知らせ」

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ロシア大統領府は、プーチン大統領に贈られた秋田犬「ゆめ」が死亡していたことを明らかにした。東日本大震災の支援に対する感謝として、2012年に秋田県から贈呈されてから13年。秋田犬の平均寿命を考慮すると、天寿を全うしたとみられる。日露関係が冷え込む中、かつての交流を象徴する存在が静かに息を引き取った。
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クレムリンが認めた「ゆめ」の死
ロシア大統領府は14日、プーチン大統領の愛犬である秋田犬「ゆめ」が昨年(2025年)死亡していたことを明らかにした。共同通信の書面質問に対し、「悲しいお知らせだが、ゆめは25年に高齢のために死んだ」と回答。死亡日や埋葬方法など詳細は明かさなかった。
ロシア大統領府は「悲しいお知らせだが、ゆめは25年に高齢のために死んだ」と簡潔に回答した。秋田犬の平均寿命は10年から13年程度とされる。ゆめのブリーダーである秋田県大館市の畠山正二さんも以前、「秋田犬の寿命は長くて12~13年。ゆめの母親は13歳まで生きた」と語っていた。2012年4月生まれのゆめは13歳を超えており、老衰による自然死の可能性が高い。
ゆめはロシア国内でも知られた存在で、過去にはタス通信なども報じてきた。愛犬家として知られるプーチン大統領にとって、ゆめは特別な存在だった。
首脳会談にも登場した愛犬
ゆめの姿が世界的な注目を集めたのは、2016年12月のことだ。日本メディアのインタビューに応じるため、プーチン大統領はクレムリンの広間にゆめを伴って現れた。カメラのフラッシュや大勢の記者に警戒したのか、ゆめは大きな声で吠え立てる。
大統領はスーツのポケットから餌を取り出し、ゆめをなだめた。「彼女は厳格な犬だ。私を守っている」。読売新聞の取材に対し、プーチン大統領は満足げな表情でそう語っている。この場面は日露両国で広く報じられ、ゆめの元気な姿が確認された最後の公式な場となった。
その後、ゆめが公の場に姿を見せる機会は激減する。大統領府の敷地内で静かに余生を過ごしていたと推測される。関係者によると、大統領は多忙な公務の合間を縫って、ゆめとの散歩を日課にしていた時期もあったという。
震災支援の返礼から始まった13年
2012年。東日本大震災の際、ロシアは迅速に救助隊を派遣し、多額の支援金を提供した。その返礼として、秋田県の佐竹敬久知事がプーチン大統領に贈ったのが、生後3カ月のメスの秋田犬だ。
大統領自身が日本語で「ゆめ(夢)」と名付けた。この出来事は、当時の日露関係の良好な雰囲気を反映している。プーチン大統領からは2013年、返礼としてシベリア猫(サイベリアン)の「ミール(平和)」が佐竹知事に贈られた。ミールは秋田県知事公舎で大切に飼育されていたが、2024年12月3日に消化器系のリンパ腫のため12歳で病死している。佐竹知事は同月9日に臨時記者会見を開き、「大変悲しい」と弔意を示していた。
動物を通じた外交は、両国の距離を縮める潤滑油の役割を果たした。しかし、その蜜月は長くは続かない。国際情勢の変化とともに、両国の関係は徐々に複雑さを増していく。
秋田県民から寄せられる静かな哀悼
ゆめの訃報は、故郷である秋田県にも届いた。秋田魁新報の取材に対し、佐竹知事は「13年という歳月を考えれば、天寿を全うしたのだと思う。大統領に可愛がってもらえたのなら、ゆめも幸せだったはずだ」とコメントを発表している。
県庁には、ニュースを知った県民から問い合わせが数件寄せられた。SNS上でも別れを惜しむ声が広がる。X(旧Twitter)では「震災の時のお礼だったね」「長生きしてくれてありがとう」といった投稿が相次いだ。
秋田犬保存会も声明を出し、ゆめが秋田犬の魅力を世界に発信する役割を果たしたことを評価した。政治的な対立を超えて、一匹の犬の死を悼む空気が広がっている。
日露関係の変遷と「犬外交」の終わり
2016年、日本政府はゆめの「婿」としてオスの秋田犬を贈る計画を打診した。しかし、ロシア側はこの申し出を辞退している。当時、北方領土問題を含む平和条約締結交渉が難航しており、ロシア側が政治的な距離を置いた結果だとみられている。
現在、ウクライナ侵攻を背景に、日露関係は戦後最悪と言われる水準まで冷え込んでいる。経済制裁や外交官の追放など、厳しい対立が続く。両国首脳が笑顔で犬を囲むような場面は、もはや想像すら難しい。
ゆめの死は、単なるペットの死にとどまらない。両国が歩み寄りの糸口を探り、文化や動物を通じて心を通わせようとした時代の、一つの区切りだ。クレムリンの奥深くで息を引き取った秋田犬は、激動の13年を静かに見届けていたのかもしれない。
[文/構成 by さとう つづり]



























































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