ピューロマジック、スプリンターズSでG1初制覇 次走は香港視野、繁殖入りの見通しも

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
9月27日に中山競馬場で行われた第60回スプリンターズステークス(G1、芝1200メートル)は、9番人気のピューロマジック(牝5)が大外枠から逃げ切り、G1初制覇を決めた。勝ちタイムは1分9秒2(稍重)。レース後、馬主の橋本征道代表は香港遠征への意欲を示し、その後は年齢を考えて繁殖入りする考えも明かした。
9番人気が大外16番から逃げ切り、首差でG1初制覇
秋のG1シリーズ開幕戦は16頭立てで争われた。ピューロマジックは8枠16番の大外からスタートは速くなかったが、二の脚の速さで一気にハナへ。前半3ハロンを33秒6で通過し、後続にリードを保ったまま直線に向いた。
連日の雨の影響が残る稍重の馬場で、中山の急坂は逃げ馬にとって試練となる。残り50メートルでワールズエンドとサウンドモリアーナが並ぶように迫ったが、ピューロマジックは最後まで先頭を譲らなかった。2着ワールズエンド(5番人気)との差は首、3着サウンドモリアーナ(11番人気)はさらにハナ差。上位3頭が同タイムでゴールした。
人気馬は伸び切れなかった。1番人気の桜花賞馬スターアニス(牝3)は中団より後ろから追い込んだが4着まで。2番人気のパンジャタワーはゲート入りを嫌がり、スタートも遅れて15着に大敗した。3番人気のフリッカージャブは2番手から粘れず12着に終わっている。
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| 着順 | 馬名 | 性齢 | 騎手 | 人気 | タイム・着差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1着(勝者) | ピューロマジック | 牝5 | 岩田望来 | 9番人気 | 1分9秒2 |
| 2着 | ワールズエンド | 牡5 | 津村明秀 | 5番人気 | クビ |
| 3着 | サウンドモリアーナ | 牝4 | 吉田隼人 | 11番人気 | ハナ |
| 4着 | スターアニス | 牝3 | C.ルメール | 1番人気 | 1馬身1/4 |
| 5着 | レッドモンレーヴ | 牡7 | 酒井学 | 14番人気 | 1馬身1/4 |
時計の面でも、この日の馬場の重さがはっきり表れた。スプリンターズSの勝ちタイムが1分9秒台になったのは、不良馬場で行われた2007年のアストンマーチャン以来、19年ぶりとなる。スピードに加えて、タフな馬場を押し切るパワーが問われたレースだった。
夏3戦からの4戦目、3年連続の挑戦で実った「三度目の正直」
ピューロマジックは父アジアエクスプレス、母メジェルダ(母の父ディープインパクト)という血統で、北海道新冠町の村田牧場の生産馬だ。3歳だった2024年に葵S、北九州記念と重賞を連勝し、2025年にはアイビスサマーダッシュを制した。スピードは早くから知られていたが、G1の壁は厚かった。
スプリンターズSは3年連続の出走。2024年は力任せに逃げて8着、2025年は他馬を前に置く競馬を試して再び8着だった。海外を含めて6度目のG1挑戦で、ようやくタイトルに手が届いた。
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転機はドバイにあった。2025年4月のアルクオーツスプリントで、陣営は息を入れて走ることを教えるため、より速い馬がそろう舞台をあえて選んだ。後方から運んで5着に追い込み、馬の後ろで我慢する経験を積んだ。安田翔伍調教師は「タメの利く逃げができるようになりました」と、その効果を説明している。
今年のローテーションも年明けから組み立てられたものだった。春に2戦を使い、そこから回復させて夏に状態を上げる。狙いどおり気温の上昇とともに調子を上げ、函館スプリントS、続くアイビスサマーダッシュを連勝した。産経賞セントウルSで2着に入り、サマースプリントシリーズの王者に輝いている。
セントウルSから中2週で迎えた大一番。夏から数えて4戦目となる臨戦過程は厳しく見えたが、安田調教師は「昨日、今日は特に落ち着いていました。パドックも今までで一番冷静に回っていました」と振り返った。サマースプリント王者によるスプリンターズS制覇は2019年のタワーオブロンドン以来2頭目で、牝馬では初めてとなる。
岩田望来と安田翔伍、そろって父とのスプリンターズS親子制覇
手綱を取った岩田望来騎手(26)にとっては、2024年の阪神ジュベナイルフィリーズ(アルマヴェローチェ)以来、JRAのG1通算2勝目となった。ピューロマジックとは前走のセントウルSからコンビを組み、これが2度目の騎乗。重賞は今年7勝目で、通算25勝目を数える。
父の岩田康誠騎手は2012年と2013年にロードカナロアでスプリンターズSを連覇している。望来騎手はこの日、ペアポルックスに騎乗した父とゴール後に馬上でグータッチを交わした。父子2代でスプリンターズSを勝ったことになる。
レース後、望来騎手は「残り50メートルくらいでやばいかなと思いましたけど、最後は根性とパワーで頑張ってくれました」と喜んだ。ただ、10月上旬はしばらく騎乗できない。9月21日の阪神6Rでの斜行により、10月3日から11日まで9日間(開催4日間)の騎乗停止処分を受けている。本人は「来週、再来週と休むのですが、また秋にパワーアップした姿を皆さんに見せたいと思います」と前を向いた。
管理する安田翔伍調教師(44)は、この勝利がJRA通算200勝の節目となった。G1は2024年の日本ダービー(ダノンデサイル)以来の2勝目。父の安田隆行元調教師もカレンチャンやロードカナロアでこのレースを勝っており、こちらも親子制覇となる。岩田騎手には「33秒台半ばで行ってほしい」と伝えていたといい、レース後は「イメージした逃げ方でした」とうなずいた。
生産した村田牧場にとっては、2009年のローレルゲレイロ以来のG1勝利だ。ローレルゲレイロもこの年にスプリンターズSを勝っており、専務取締役の村田康彰氏は「またスプリンターズSでしたね」と笑顔を見せた。父アジアエクスプレスにとっても、産駒初のG1タイトルとなった。
馬主は「香港に行けるなら」、その後は年齢的に繁殖入りの考え
ピューロマジックを所有する株式会社スリーエイチレーシングの橋本征道代表(57)は、レース後に今後の予定を問われ、こう答えた。
「もし香港に行けるなら香港に行って、そこでおそらく年齢的に繁殖に、とは思っています。あとはもう、調教師と相談しながら決めるような状況になると思います」
次の目標として想定されるのは、12月に香港・シャティン競馬場で行われる香港スプリント(G1、芝1200メートル)だ。香港国際競走は招待制のため、出走には選出される必要がある。そのうえで、香港をラストランとして繁殖入りするプランもある。ただし最終的な判断は安田調教師と話し合って決めるとしており、現時点で引退の時期が正式に決まったわけではない。
香港スプリントに出走すれば、立ちはだかるのは地元のカーインライジングだ。2024年、2025年と香港スプリントを連覇し、2025年にはオーストラリアのジ・エベレストも制した世界屈指のスプリンターだ。橋本代表は「カーインライジングに800メートルだけは勝ちたい(笑)」と冗談めかし、逃げ馬ならではの言い回しで世界最強馬への挑戦を口にした。
橋本代表にとっては、2022年の朝日杯フューチュリティステークス(ドルチェモア)、ホープフルステークス(ドゥラエレーデ)に続く中央G1の3勝目となる。際どい決着を「クビ差であろうがハナ差であろうが、勝ちは勝ちですから」と笑い飛ばし、ローテーションを組んで前走後にリフレッシュ放牧を挟んだ厩舎の仕上げをたたえた。
一方、生産者の村田氏は「来年も走るのか、それとも繁殖に入るのかどちらにせよ楽しみです」と語り、オーナーとは今後について話していないと明かしている。母メジェルダは今春にサートゥルナーリアとの間の牡馬を出産した。
5歳の秋、G1ホースとなったピューロマジック。夏から走り続けてきた快速牝馬の次の一戦が香港になるかどうかは、選出と陣営の判断にかかる。
[文/構成 by スポーツライター 南條楓]








































































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