梅野倖子、繰り上がりで銅メダル アジア大会女子マラソン競歩、1着が靴底の厚さ規定違反で失格

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
陸上女子競歩の梅野倖子(23)=LOCOK=が、愛知・名古屋アジア大会の女子マラソン競歩で銅メダルを手にした。9月27日のレースは3時間34分59秒の4着。1着でゴールしたヤスミナ・トクサンバエワ(21)=カザフスタン=が翌28日、靴底の厚さの規定を超えるシューズを履いていたとして失格となり、順位が一つ上がった。
1着のトクサンバエワが失格、金と銀は中国勢に
女子マラソン競歩は9月27日午前7時30分、愛知県庁と名古屋市役所の周辺に設けたコースでスタートした。距離はマラソンと同じ42.195km。出場はわずか7人で、路面が濡れた状態でのレースとなった。
主役はトクサンバエワだった。中国勢と先頭を争いながら18km付近で前に出ると、そこから一人で差を広げ、3時間22分20秒でフィニッシュする。2着の旦増曲宗(中国)とは3分49秒の大差で、女子の競歩種目では今大会初めて中国勢以外の金メダリストが生まれるはずだった。
ところが、レース後に結果をめぐる抗議が出され、正式な順位は翌28日まで確定しなかった。大会主催者は28日、トクサンバエワが着用していたシューズが規定違反だったとして失格を発表。世界陸連(WA)が定める靴底の厚さの規定(TR5.2)を超えるシューズだったことが、その後の調査で分かったという。大会の技術役員は、世界陸連の承認リストに載ったシューズではなかったため世界陸連に照会し、金メダルの取り消しは世界陸連が判断したと説明している。公式記録の失格理由は、シューズ規定(TR5.2)に従わなかったことによる「不適切な行為」(TR7.1)とされた。
この結果、2着の旦増曲宗が金メダル、3着の馬麗(中国)が銀メダルとなり、4着の梅野が銅メダルに繰り上がった。5着でゴールした矢来舞香(千葉興業銀行)も4位に変わっている。
| 最終順位 | 選手 | 国・地域 | 記録 |
|---|---|---|---|
| 1位(金) | 旦増曲宗 | 中国 | 3時間26分09秒 |
| 2位(銀) | 馬麗 | 中国 | 3時間32分26秒 |
| 3位(銅) | 梅野倖子 | 日本 | 3時間34分59秒 |
| 4位 | 矢来舞香 | 日本 | 3時間36分40秒 |
| 失格 | ヤスミナ・トクサンバエワ | カザフスタン | 3時間22分20秒で1着ゴール |
靴底は40ミリまで 競歩にも適用されるシューズ規定
世界陸連の「アスレチック・シューズ規則」は、種目ごとに靴底の厚さの上限を決めている。ランニングと競歩を合わせたロード種目の上限は40ミリ。トラック種目は2024年11月から距離を問わず20ミリ(跳躍種目とやり投げも20ミリ)と厳しく、トラックで行う競歩だけはロードと同じ40ミリまで認める。
反発力の強い厚底シューズが長距離界に広がったのを受け、世界陸連は靴底の厚さを数字で縛るようになった。規定に合わないシューズで出場すれば、記録そのものが認められない。42.195kmを歩き切った1着の記録も、この規定の前では認められなかった。
カザフスタン側は納得していない。同国の陸上競技連盟は、シューズはスタート前に点検を受けていたと主張し、28日までに抗議と不服申し立てを出したと明らかにした。カザフスタンの報道では、トクサンバエワが履いていたのはアシックスの「マジックスピード4」で、世界陸連の承認モデルの一覧に載っていないモデルだったとされる。同国オリンピック委員会も世界陸連、アジア陸上競技連盟、アジア・オリンピック評議会(OCA)と連絡を取り合い、対応を探っている。連盟は判断の行方にかかわらず、トクサンバエワに優勝の報奨金を支払う方針を示した。
9月29日時点で、主催者やOCAから順位を再び改める発表は出ていない。
「悔しいの一言」 繰り上がりの銅にも晴れない表情
レース当日の梅野は、表彰台のすぐ外にいた。上位の中国選手がレッドカード3枚でペナルティーゾーンに入り、一時は3番手に上がる場面もあった。しかし「足が残っていなくてついていけませんでした」と再び4番手に後退。「ついて行けさえすれば、希望はある」と最後まで粘り、レッドカードを1枚も受けずにゴールした。この歩き切った42.195kmが、翌日の銅メダルにつながった。
ゴール直後の梅野は涙が止まらなかった。「完全に実力不足。全く勝負できなかった」。レース当日は結果が確定せず、表彰式も行われなかった。
銅メダルが授与されたのは28日午後、パロマ瑞穂スタジアムでの表彰式だった。笑顔でメダルを首にかけた梅野は、スタンドの大歓声について「日本と呼ばれ、自分の名前が呼ばれた時にはすごい歓声があって、それは良かったです」と語る。
それでも、レースの評価は変わらない。「昨日のレースごとあまり変わらず、悔しいの一言」。審議に長い時間がかかったことにも触れ、「過去のこととして次に切り替えて、反省すべきところを考えていました」と明かした。
福岡・福津市出身、前回の杭州大会も4位
梅野は2003年1月8日生まれ、福岡県福津市出身。中学ではバスケットボール部に入っており、競歩を始めたのは宗像高に進んでからだった。順天堂大で力を伸ばし、2023年ブダペスト世界選手権は20km競歩で35位、同じ年の杭州アジア大会は20km競歩で4位に入る。2025年の東京世界選手権では35km競歩で2時間56分28秒の15位だった。
2026年は2月15日の日本選手権ハーフマラソン競歩(神戸市)を1時間35分01秒で制し、3月15日の日本選手権マラソン競歩(石川県能美市)も3時間33分47秒で勝った。二つの種目でアジア大会の代表に内定したうえで、より勝負できる種目としてマラソン競歩を選んでいる。
指導を受けるのは、2025年に現役を退いた岡田久美子監督。五輪に3大会、世界選手権に6大会出場した競歩の第一人者だ。梅野は「夏もしっかり練習をしてきて、準備はしてきました。調子は良い状態で来られていた」と語る一方、「土台の部分から何段階も下だったのかな。力不足です」とも話した。
杭州では20km競歩で4位、名古屋でもゴールは4着。2大会続けてあと一歩でメダルに届かなかった選手が、今回は1日遅れで表彰台に立った。
男子は勝木隼人が金、諏方元郁も銅
同じ9月27日の午前には男子マラソン競歩も同じコースで行われた。勝木隼人(35)=自衛隊体育学校=が3時間3分36秒で優勝。31km手前で警告が重なった周應成(中国)を引き離し、終盤は一人旅だった。2018年ジャカルタ大会の50km競歩に続く、アジア大会2個目の金メダルとなる。
諏方元郁(愛知製鋼)も34kmで3枚目の警告を受けて4分のペナルティーを科されながら歩き切り、3時間8分57秒で銅メダル。女子の梅野と合わせ、マラソン競歩で日本勢は三つのメダルを手にした。
関連記事:勝木隼人、アジア大会マラソン競歩で金メダル 18年ジャカルタ大会に続く金、自衛隊所属の経歴
次の目標は2027年北京世界選手権での入賞
銅メダルを手にしても、梅野の目はアジアの3位に向いていない。次の目標に掲げたのは、2027年の北京世界選手権のマラソン競歩での入賞だ。岡田監督とは「やるべきことがたくさんあるよね、という話になりました」という。
表彰式の後には「来年の世界選手権の選考レースに向けて準備したい」とも話した。繰り上がりのメダルを持ち帰り、23歳は次の選考レースに向けて再び歩き始める。
[文/構成 by スポーツライター 南條楓]








































































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