ザセム明洞1号店、「詐欺被害がやばい、絶対いかないで」観光客からの悪評とトラブル報告が続出―その実態と対処法
被害に遭ったら?公的機関の対応と限界
万が一被害に遭ってしまった場合、どのような対処法があるのだろうか。泣き寝入りせずに行動することで、一部でも返金に至ったケースも存在する。
現地での対応:観光警察への相談
滞在中に被害に気づいた場合、最も有効な手段の一つが「観光警察」への相談である。観光警察は、主要な観光地で活動しており、日本語通訳を介して対応してくれる場合がある。
実際に、観光警察に被害を届け出て、警察官と共に店舗へ交渉に向かったところ、全額ではないものの、一部返金に成功したという報告がある。しかし、警察も「サイン済みのレシートがある以上、詐欺の明確な証拠がなく強く出られない」と述べており、あくまで交渉の仲介や見守り役にとどまることが多い。それでも、公権力が介入することで店側が態度を軟化させる可能性はあるため、試みる価値はあるだろう。観光警察は「この店は我々も頭が痛い」と話していたといい、問題が常態化していることを示唆している。
帰国後の対応:カード会社と消費者センター
帰国後に被害が発覚した場合、まずはクレジットカード会社に連絡し、事情を説明して支払いの異議申し立て(チャージバック)を申請することになる。しかし、前述の通り、本人のサインがある場合、カード会社が返金を認めるケースは稀である。「サインは店が本人確認をするためのもので、カード会社がその有効性を判断するものではない」というのが一部カード会社のスタンスであり、被害者と店舗間の問題として扱われることが多い。
そこで頼りになるのが、日本の「国民生活センター越境消費者センター(CCJ)」や、韓国の「韓国消費者院(KCA)」といった公的機関である。CCJは海外での買い物トラブルに関する相談を受け付けており、韓国消費者院と連携して事業者との交渉を仲介してくれる可能性がある。
実際に、これらの機関を通じて粘り強く交渉した結果、クレジットカード会社が被害額を補償する形で解決した事例も存在する。ただし、解決までには半年以上を要することもあり、必ずしも返金が保証されるわけではない。重要なのは、諦めずに複数の窓口に相談し、記録を残しておくことである。
なぜ問題は続くのか?旅行者ができる自衛策
これほど長期間にわたり問題が指摘されながら、なぜこの店舗の営業は続いているのだろうか。背景には、観光客が相手であるため評判が拡散しにくいこと、短期滞在のため被害を訴えにくいこと、そして法的な立証が難しい巧妙な手口などが挙げられる。2023年10月からはソウル市による「明洞観光改善総合計画」が始まり、屋台のぼったくりなどは改善傾向にあるとされるが、この店舗のような悪質な個店への対策は依然として追いついていないのが現状のようだ。
したがって、最も重要なのは旅行者自身が自衛策を講じることである。被害者の声から、以下の対策が有効と考えられる。
- 入店しない:最も確実な方法。口コミサイトなどで事前に情報を確認し、評判の悪い店には近づかない。
- 毅然とした態度を取る:客引きに遭っても目を合わせず、はっきりと「いりません(필요 없어요/ピリョ オプソヨ)」と意思表示する。腕を掴まれたら「やめてください(하지 마세요/ハジ マセヨ)」と声を張ることも有効である。
- 無料のパックを受け取らない:客引きが渡してくる無料のサンプルやパックは、店内に引き込むための撒き餌である。受け取らないことが肝心だ。
- クレジットカード払いを避ける:可能であれば現金で支払う。カード払いをせざるを得ない場合は、決済端末に表示される金額を必ず自分の目で確認し、レシートもその場で受け取り、内容を隅々までチェックする。
- 会話を録音する:万が一の交渉に備え、店員との会話をスマートフォンのボイスレコーダーで録音しておくことも一つの手段となりうる。ただし、店員がそれに気づき、態度を変える可能性もある。
楽しい旅行のために、賢い消費者であることの重要性
韓国コスメのショッピングは、多くの観光客にとって大きな楽しみの一つである。ザセムというブランド自体に罪はなく、他の多くの店舗は誠実な営業を行っている。しかし、「ザセム明洞1号店」のように、一部の悪質な店舗がブランド全体の評判、ひいては韓国旅行のイメージを損なっていることは極めて残念な事実である。
この問題は、単なる「強引な接客」のレベルを超え、詐欺的な要素を含む深刻な消費者問題と言える。行政や警察の対応にも限界がある以上、最終的には消費者一人ひとりが情報を得て、賢く行動することが自身を守る最善の策となる。渡韓を計画している人々は、こうした事例があることを念頭に置き、楽しい思い出が悪夢に変わることのないよう、十分な注意を払う必要があるだろう。
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]













































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