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ファミマ「トイレは聞かれても貸しません」清掃代と慰謝料150万円請求の貼り紙が波紋

ファミマ「トイレは聞かれても貸しません」清掃代と慰謝料150万円請求の貼り紙が波紋

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あるファミリーマート店舗が、悪質なトイレ利用に対し「清掃代と慰謝料金150万請求」と記した貼り紙を掲示し、SNSで拡散され波紋を広げている。この背景には、店舗が全額負担する維持コスト、深刻化するマナー違反、そして社会インフラとしての期待という三重苦が存在する。今回の事案は、店舗の善意に依存するコンビニトイレの仕組みが限界に達していることを示す象徴的な出来事といえる。

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「小便器に大をされた」- 怒りの貼り紙、トイレ無期限停止へ

2025年11月、あるファミリーマートの店舗に掲示された一枚の貼り紙が、SNS上で大きな注目を集めた。投稿された画像には、度重なる悪質なトイレ利用に追い詰められた店主の悲痛な叫びと、厳しい対応を宣言する内容が記されていた。この出来事は、多くの人々が日常的に利用するコンビニトイレが抱える根深い問題を浮き彫りにした。

発端となったのは、X(旧Twitter)に投稿された一枚の写真である。

そこには「小便器に大をされたお客様へ」という衝撃的な書き出しで始まる貼り紙が写っていた。店側は行為者に対し「清掃代と慰謝料金150万請求致します」と通告。さらに、スタッフへの「貸せ!」といった強要はカスタマーハラスメントとして通報すること、コンビニは小売業でありトイレレンタル業ではないことなどを強い口調で訴えている。

貼り紙は、修理・清掃代がすべて店舗負担であるというフランチャイズ契約の厳しい現実にも言及。「借りれないの?じゃないです。貸したくありません!」と利用を拒絶し、店を代表してトイレの有料化を強く望むと表明。最終的に、この店舗では関係者以外のトイレ利用を「無期限全面利用停止」するという結論に至ったことが記されている。

「貸したくない」- 悲痛な叫びの背景にある加盟店の三重苦

今回の過激ともいえる貼り紙の背景には、コンビニ加盟店が抱える深刻な「三重苦」が存在する。それは「経済的負担」「精神的・肉体的負担」、そして「契約上の立場」である。

経済的負担:見えざるコストのすべてが店舗に

利用者が無料で使うトイレだが、店舗にとっては決して無料ではない。水道光熱費、トイレットペーパーや洗剤などの消耗品費、清掃にかかる人件費、そして設備の修繕費は、すべて加盟店の利益から捻出される。ある試算によれば、トイレ利用1回あたりのコストは約6円、1日100人の利用で月間約18,000円の負担になるとされる。特に、配管の詰まりや設備の破壊といった悪質な利用が発生した場合、修繕費は数万円から数十万円に及ぶこともあり、経営を直接圧迫する。

悪質利用:後を絶たないマナー違反と精神的負担

経済的負担以上に店舗を疲弊させるのが、一部利用者による悪質なマナー違反である。今回の「小便器への排便」は極端な例だが、壁一面に汚物を塗りつけられる、使用済みオムツや弁当ガラが放置される、備品が盗まれる、薬物使用が疑われる痕跡が見つかるなど、目を覆いたくなるような事例は後を絶たない。ある調査では、加盟店オーナーの約4割が「トイレを貸すのをやめたい」と回答しており、度重なる迷惑行為が従業員の精神を蝕み、安全を脅かす深刻な問題となっている実態がうかがえる。

契約上の立場:本部は関与せず、負担は店舗に

ファミリーマートをはじめ多くのコンビニチェーンでは、トイレを開放するか否かは各加盟店の判断に委ねられている。本部が一斉に閉鎖を指示すればブランドイメージの低下につながるため、トラブル対応やコストのリスクをすべて加盟店が負う形で「店舗判断」という仕組みが成り立っているのが現状だ。その結果、修理や清掃にかかる費用も本部との契約上、店舗負担となるケースがほとんどであり、行政に相談しても「民間施設の問題」として公的な支援を得られないことが多い。「無料で貸した上に修理依頼は自腹」という状況が、店舗を追い詰めているのである。

社会インフラか、店舗の善意か – 揺れるコンビニトイレの位置づけ

店舗側の負担が限界に達する一方で、コンビニトイレはもはや社会に不可欠なインフラとしての側面を強めている。この「社会インフラ」としての期待と、「店舗の善意」という現実との乖離が、問題をより複雑にしている。

公共トイレを代替する「新たな公共トイレ」

24時間営業で、都市部から郊外まで高密度に立地するコンビニのトイレは、減少する公衆トイレを代替する「新たな公共トイレ」としての役割を担っている。名古屋市で行われた調査では、公衆トイレが少ない都心部をコンビニが高密度にカバーし、両者が補完関係にあることが示された。また、ローソンが2020年に新型コロナ対策でトイレ使用を一時休止した際、トラックドライバーなどから「仕事にならない」との声が殺到し、わずか1日で方針を転換した事例は、コンビニトイレが社会を支えるインフラであることを象徴している。

法的義務はなく、各社の対応は様々

しかし、社会的な期待とは裏腹に、コンビニにトイレの貸し出しを義務付ける法律はない。かつてイートインスペースを設ける場合は「飲食店営業」と見なされトイレ設置義務があったが、法改正により「簡易な飲食店営業」に分類され、その要件はなくなった。トイレの貸し出しはあくまで店舗の「施設管理権」に基づく判断であり、拒否することも法的には可能である。

このため、チェーン各社で対応は分かれている。

  • ファミリーマート、セブン-イレブン:トイレの開放は各加盟店の判断に委ねる方針。
  • ローソン:1997年にチェーンで初めてトイレを開放し、社会インフラとしての役割を認識。マナー向上を目指す「アートトイレ」などの取り組みも行う。
  • ミニストップ:公式サイトで「どうぞご利用下さい」と明記し、原則開放の姿勢を貫いている。

次ページ:有料化、公的支援、マナー向上 – 持続可能な仕組みへの模索

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