東京国際映画祭2026、黒澤明賞に呉美保監督とモハマド・ラスロフ監督 エシカル・フィルム賞審査委員長は磯村勇斗

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第39回東京国際映画祭(TIFF)が29日、黒澤明賞を呉美保監督とイラン出身のモハマド・ラスロフ監督に贈ると発表した。呉監督は初監督作から20年の節目での受賞となる。社会課題をテーマにした作品を選ぶエシカル・フィルム賞の審査委員長には俳優の磯村勇斗が就き、授賞式とトークセッションは11月2日に開かれる予定だ。
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黒澤明賞は呉美保とモハマド・ラスロフの2人
10月26日(月)から11月4日(水)まで開かれる第39回東京国際映画祭の黒澤明賞が、29日に発表された。受賞者は『ぼくが生きてる、ふたつの世界』『ふつうの子ども』の呉美保(お・みぽ)監督と、『悪は存在せず』『聖なるイチジクの種』のモハマド・ラスロフ監督。同じ日に、エシカル・フィルム賞の審査委員長を磯村勇斗が務めることも明らかになった。
黒澤明賞は、黒澤明監督の業績を後世に伝え、新しい才能を送り出したいという思いから、世界の映画界に貢献した映画人や、映画界の未来を託したい映画人に贈られる。2022年にカプコンの協力で14年ぶりに復活し、昨年は李相日監督とクロエ・ジャオ監督が受けた。
選考にあたったのは山田洋次監督、李相日監督、撮影監督の芦澤明子、市山尚三東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの4人だ。前年の受賞者である李監督が、今年は選ぶ側に回っている。
呉美保監督は「初監督作から20年の節目」
呉監督は大阪芸術大学を卒業後、スクリプター(撮影の記録係)として映画の現場に入り、2006年の『酒井家のしあわせ』で長編監督デビューした。2010年の『オカンの嫁入り』で新藤兼人賞金賞を受け、2014年の『そこのみにて光輝く』ではモントリオール世界映画祭の最優秀監督賞をはじめ、国内外で60もの映画賞を受けた。
2015年の『きみはいい子』のあと、キャリアは一度止まる。出産と育児を経て、2024年に9年ぶりの長編『ぼくが生きてる、ふたつの世界』で本格的に復帰した。
選考委員は授賞理由で、一貫して社会の片隅に生きる人々を善悪で判断せず、多面的に見つめてきた作風を挙げた。とりわけ『きみはいい子』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』『ふつうの子ども』の3作で、子どもたちをありのままに描く演出を高く評価している。
受賞を受けて、呉監督は次のようにコメントを寄せた。
「「初監督作から20年の節目に、この上ない賞を賜り、驚きとともに身に余る思いです。2010年にいただいた新藤兼人賞は、映画を作り続ける大きな支えとなりました。牛歩ではありましたが、図らずも黒澤明賞に辿り着け、なんと幸福な映画人生だろうと喜びを噛みしめています」」
コメントの後半では、スタッフやキャスト、観客、山田洋次監督をはじめとする選考委員への感謝を述べ、最後は家族への言葉で結んでいる。
最新作『ふつうの子ども』は、嶋田鉄太が主演し、蒼井優、風間俊介、瀧内公美らが出演した作品で、ズリーン国際映画祭のコンペティション部門に選ばれ、世界各地の映画祭で上映が続く。
呉監督と今年の映画祭の縁はこれだけではない。第39回のポスターは大島依提亜がデザインし、呉監督が監修を務めた。映画祭の顔をつくった監督が、同じ映画祭で賞を受け取る。
ラスロフ監督は圧力の中で撮り続けた
もう1人の受賞者、ラスロフ監督はイラン南部シーラーズの出身だ。イラン政府による検閲や禁固判決、製作禁止処分を受けながら、ゲリラ的な撮影も使って映画を作り続けてきた。
2020年には『悪は存在せず』でベルリン国際映画祭の金熊賞を受け、同作は同じ年の第33回東京国際映画祭でも上映された。2024年の『聖なるイチジクの種』は第77回カンヌ国際映画祭で審査委員特別賞を受け、アカデミー賞国際長編映画賞の候補にも入った。ただ、その完成直前に8年の禁固刑判決を受け、ひそかにイランを出国している。
選考委員は、体制の中で行われる人権の抑圧をテーマに重い作品を作ってきた点を挙げた。近作2本については、抑圧する側の人間も1人の市民だというヒューマニズムの視点に立ったことが国際的な評価につながったと説明している。さまざまな圧力に屈せず創作を続けてきたことも授賞の理由に含まれる。
ラスロフ監督は「黒澤明賞を授与いただき、大変光栄に存じます」とコメント。黒澤作品について「黒澤監督の映画は、人間のあり方や、危機に直面したときに私たちが迫られる倫理的な選択についての深い考察となっています」と敬意を示した。
受賞に合わせて「黒澤明の愛した映画」と題した上映も組まれる。『サーカス』(1928年)、『姿三四郎 4Kデジタルリマスター版』(1943年)、『生きる 4Kデジタルリマスター版』(1952年)、『友だちのうちはどこ?』(1987年)の4本だ。
磯村勇斗が審査委員長、授賞式は11月2日
エシカル・フィルム賞は、環境や貧困、差別といった社会課題への意識や多様性への理解を映画で広げようと、2023年に住友商事の協力で新設された。TIFFにエントリーされた新作の中から「人や社会・環境を思いやる考え方・行動」に合う3作品をノミネートし、審査委員会が1本を選ぶ。
今年のノミネートは『アマデオともうひとつの新世界』『夢から醒めることはそうない』『時と潮』の3本。審査は磯村のほか、TIFFの現役大学生によるPRチーム「学生応援団」から選ばれた3人も加わる。若い世代に関心を持ってもらう狙いだ。
磯村は地元・静岡で「しずおか映画祭」を主催するなど、映画を通じた地域の活動にも取り組んできた。就任にあたり、「今日、私たちは小さな画面の中で膨大な情報に触れ、短い時間で『知ったつもり』になり、答えだけを求めるようになっている気がします」と今の情報環境に触れたうえで、「映画には、その過程を誰かの人生や感情を通して体験させ、私たちを立ち止まらせてくれる力があります」と語っている。
受賞作品の授賞式と、磯村が登壇するトークセッションは11月2日(月)に開かれる予定だ。
映画祭本番まで1カ月を切る
第39回東京国際映画祭の開幕は10月26日。黒澤明賞の2人とエシカル・フィルム賞の授賞式が、会期中の大きな見どころに加わった。
デビューから20年で節目の賞を受ける日本の監督と、祖国を離れながらも撮り続けるイランの監督。歩んできた道は違っても、2人が向き合ってきたのは社会の中で生きる人の姿だった。授賞式で2人がどんな言葉を届けるのか、11月の東京で明らかになる。
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]









































































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