紅白の視聴率”復活”の35.2%、でも若者は見ていない? データで見る世代間格差

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2025年大晦日に放送された「第76回NHK紅白歌合戦」の視聴率が、第2部で関東地区35.2%を記録し、3年ぶりに35%台へ回復した。豪華な特別企画やベテラン勢の出演が数字を押し上げた一方、出演者の高齢化と若年層視聴者の乖離という課題も浮き彫りになった。データは、番組が世代間の「分断」を乗り越え、国民的番組であり続けられるかの岐路に立っていることを示唆している。<本文は下へ>
視聴率回復の兆し、3年ぶり大台へ
2025年12月31日に放送された「第76回NHK紅白歌合戦」の平均世帯視聴率が2026年1月2日に発表された。ビデオリサーチの調べによると、関東地区では第1部(19:20〜)が30.8%、第2部(21:00〜)が35.2%を記録。
第2部は2022年の第73回(35.3%)以来3年ぶりに35%の大台を回復し、歴代ワースト3位だった前年(32.7%)から2.5ポイント上昇した。
また、第1部も3年ぶりに30%台に乗せ、関西地区でも第1部が31.5%(前年比3.9ポイント増)と大幅に数字を伸ばすなど、近年の視聴率低迷からの”復活”を印象付ける結果となった。
近年の紅白は視聴率の低下が指摘され続けてきた。特に第2部の視聴率は、2021年に当時としては過去最低の34.3%を記録し、2023年には31.9%まで落ち込んでいた。今回の回復は、NHKにとって大きな意味を持つものと言えるだろう。
| 年(回) | 第1部 | 第2部 |
|---|---|---|
| 2020年(第71回) | 34.2% | 40.3% |
| 2021年(第72回) | 31.5% | 34.3% |
| 2022年(第73回) | 31.2% | 35.3% |
| 2023年(第74回) | 29.0% | 31.9% |
| 2024年(第75回) | 29.0% | 32.7% |
| 2025年(第76回) | 30.8% | 35.2% |
数字を押し上げた特別企画と多様な出演者
今回の視聴率回復の背景には、何があったのか。要因の一つとして、放送100年を記念した豪華な特別企画の数々が挙げられる。
ベテラン・大物の力と破格の演出
特に注目されたのは、大物アーティストへの破格の待遇である。特別企画で13年ぶりに出場した矢沢永吉には約9分半という異例の長尺パフォーマンス時間が与えられた。
また、福山雅治は前半で稲葉浩志と共演し、後半でもソロで歌唱。合計の出演時間は矢沢を超える約9分半に達し、番組が特に重視していたことがうかがえる。
このほか、堺正章、松任谷由実、玉置浩二、そして番組の最後を飾った松田聖子など、往年のスターが次々と登場し、中高年層の視聴者をテレビの前に引きつけたとみられる。
さらに、朝ドラ「あんぱん」のスペシャルステージでは、キャスト陣に加え「それいけ!アンパンマン」のキャラクターたちが登場。世代を超えて親しまれる国民的キャラクターの共演は、ファミリー層の視聴を促した可能性がある。
多様化する男性グループとSTARTO勢の復帰
2023年、2024年と2年連続で出場がなかったSTARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)所属グループが復帰したことも大きなトピックであった。
今回はKing & PrinceとSixTONESの2組が出場。かつてのように多くの「枠」が用意されたわけではないが、人気グループの返り咲きはファンの視聴を喚起した。
一方で、元King & Princeのメンバーで構成されるNumber_iも出場し、新旧グループの競演はSNS上で大きな話題を呼んだ。これに加え、BE:FIRST、&TEAM、M!LKといった非STARTO系の男性グループも存在感を示し、男性アイドル市場の多様化を象徴するラインナップとなった。
SNSの熱狂とデータが示す「世代間の壁」
番組放送中、SNS上では様々なパフォーマンスが話題となった。
初出場のM!LKはメンバーがSNSで「僕らの11年を全て肯定してくれた」と喜びを語り、久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」や布施明の「MY WAY」といった名曲の披露は往年のファンを沸かせた。
一方で、ちゃんみなの衣装をめぐり賛否両論が巻き起こるなど、ネット上では活発な議論が交わされた。
しかし、この熱狂の裏で、データは深刻な課題を浮き彫りにしている。それは、視聴者の「世代間格差」である。
過去最多の「65歳以上」と若年層の視聴動向
今回、出演者の年齢構成を見ると、65歳以上のアーティストが10組(全体の20%)に達し、過去最多を更新した。堺正章(79歳)を筆頭に、布施明、髙橋真梨子、矢沢永吉らが名を連ねた。
これは高齢層の視聴者を意識した人選と考えられるが、専門家の分析によれば、出演者の高年齢化は必ずしも視聴率向上に結びつかないという。過去のデータでは、若年層の出演者割合と視聴率には強い正の相関がある一方、高年層割合とは強い負の相関が見られるとの指摘もある。
一方で、NHKは若者層の取り込みも模索している。近年のK-POPグループの積極的な起用はその一例だ。
視聴分析サービスを提供するREVISIO株式会社の調査では、テレビ離れが指摘されるZ世代(10代〜20代半ば)の紅白への注目度が、2022年を底に上昇傾向にあることが示されている。
同社は、K-POPアーティストの出演や、世代やジャンルを超えた特別企画が、SNSでの話題化を通じて若者のリアルタイム視聴を促している可能性を指摘する。
つまり、現在の紅白は「往年のスターで中高年層の支持を固めつつ、K-POPやネットで話題のアーティストで若者層を呼び込む」という二正面作戦を採っているように見える。
しかし、それぞれの世代が普段接する音楽が異なる「フィルターバブル」現象の中、両者をひとつの番組で満足させることは容易ではない。結果として、どちらの世代からも「見たい歌手が少ない」という声が上がる”分断”を招く危険性もはらんでいる。
まとめ:国民的番組はどこへ向かうのか
第76回紅白歌合戦は、視聴率という点では「復活」の狼煙を上げた。白組が2年連続で優勝し、大トリを務めたMrs. GREEN APPLEの歌唱中に地震速報のテロップが入るというハプニングもありながら、4時間超の生放送は幕を閉じた。
しかし、その内実を見ると、課題は山積している。かつて1963年に視聴率81.4%を記録した時代とは異なり、メディア環境は激変した。テレビだけでなく、多様なプラットフォームで人々が音楽に触れる現代において、紅白が「世代をつなぐ」というテーマを真に実現できているのか。今回の結果は、その問いを改めて突きつけている。
ベテラン勢の圧巻のパフォーマンスと、若者に支持される新しい才能の輝き。その両方を内包しながらも、世代間の溝を埋めきれていないのが現状であろう。視聴率の回復を次なる飛躍につなげられるか。国民的番組の模索は、2026年も続く。
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]


















































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