義ノ富士、相撲を取る稽古を再開し九州場所へ「初日からがんがんいく」 熊本県宇土市出身の25歳が秋巡業で7番

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大相撲の秋巡業が10月9日、埼玉県秩父市で行われ、義ノ富士(25)=伊勢ヶ濱=が今巡業で初めて相撲を取る稽古に臨んだ。関脇・藤ノ川らと7番取って4勝3敗。熊本県宇土市出身で、九州場所(11月8日初日、福岡国際センター)では三役復帰が濃厚だ。地元・九州での場所へ向け「初日からがんがんいく」と気合を入れた。
関脇・藤ノ川らと7番、出来は「まあまあ」
秩父市での巡業は、義ノ富士にとって秋巡業で初めての実戦稽古となった。関取衆の申し合い稽古に加わり、関脇・藤ノ川(伊勢ノ海)や元大関の高安らと計7番。結果は4勝3敗だった。
藤ノ川との一番では、相手の鋭い出足を受け止めてから右を差し、そのまま寄り切る場面があった。藤ノ川は21歳で、秋場所で新三役の関脇に昇進したばかり。秋場所の初日に義ノ富士が敗れた相手でもある。
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稽古を終えた義ノ富士の表情は落ち着いていた。「体を動かそうと思った。(出来は)まあまあですね」とうなずき、「ぼちぼち調子を上げていきたい」と話す。場所後は兄弟子の結婚式への出席などが重なり「やることが多かった」と苦笑い。
同じ9日の秩父巡業では、同じ伊勢ヶ濱部屋の小結・伯乃富士が巡業を離脱した。巡業部長の高田川親方によると、アキレス腱に違和感を訴えたという。部屋の兄弟弟子が抜けた日に、義ノ富士は実戦の稽古を再開した。
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初日から5連敗、そこから9勝1敗の巻き返し
義ノ富士が自信の根拠に挙げるのは、9月の秋場所だ。西前頭2枚目で臨んだこの場所は、初日の藤ノ川から琴櫻、美ノ海、大栄翔、横綱・大の里と、上位陣を中心に5連敗のスタートとなった。
ところが6日目に霧島を破ってから流れが変わる。9日目に安青錦に敗れたものの、10日目の高安戦から千秋楽の朝乃山戦まで6連勝。千秋楽は大関経験者の朝乃山を寄り倒し、残り10日間を9勝1敗で乗り切って9勝6敗で場所を終えた。14日目に藤凌駕を寄り切って勝ち越しを決めた後には「さすがにきつかった。もうしたくない」とこぼしている。
5連敗した時点の心境については、こう振り返っている。「ダメだっていうのはなかった。まだ負け越していない。あと2回負けられる、それぐらいの感じです」。持ち前の前向きさが、後半の白星につながった。
秩父ではこの経験を「5連敗しても勝ち越せる自信がついた」と表現した。一方で、課題もはっきりしている。「15日間戦うには安定感が大事。そういう意味(今のまま)では優勝は遠い」。波の大きい場所運びを改めたい考えだ。
番付の流れを見ると、返り三役への期待が高まる理由が分かる。初土俵は2024年5月場所で、幕下最下位格付出からのスタートだった。2025年3月場所で新十両に上がると、14勝1敗、13勝2敗で十両を2場所連続で制し、同年7月場所で新入幕を果たした。新入幕の場所は11勝4敗で、最後まで優勝争いに加わっている。2026年7月の名古屋場所では新小結に昇進し、初日に横綱・大の里を破って好スタートを切った。場所前には首を痛め、相撲を取る稽古を再開したのは場所直前だった。最終的に6勝9敗と負け越し、平幕に戻っていた。
三賞は敢闘賞2回、技能賞2回、殊勲賞1回の計5回。金星も3個を数える。入門から2年半足らずで、幕内上位に定着した。
| 場所 | 番付 | 成績 | 主な出来事 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月場所 | 東前頭14枚目 | 11勝4敗 | 新入幕、敢闘賞・技能賞 |
| 2025年9月場所 | 西前頭6枚目 | 8勝7敗 | 勝ち越し |
| 2025年11月場所 | 東前頭5枚目 | 9勝6敗 | 義ノ富士に改名、技能賞 |
| 2026年1月場所 | 西前頭筆頭 | 8勝7敗 | 殊勲賞 |
| 2026年3月場所 | 西前頭筆頭 | 7勝8敗 | 初の負け越し |
| 2026年5月場所 | 東前頭2枚目 | 11勝4敗 | 敢闘賞 |
| 2026年7月場所 | 東小結 | 6勝9敗 | 新三役 |
| 2026年9月場所 | 西前頭2枚目 | 9勝6敗 | 初日から5連敗の後に9勝1敗 |
熊本県宇土市が育てた学生横綱
義ノ富士は2001年6月25日生まれ、熊本県宇土市の出身。本名は草野直哉で、2025年の九州場所前まで本名の「草野」で土俵に上がっていた。相撲を始めたのは6歳のときだ。身長185cm、体重162kgで、得意は右四つからの寄り。日本相撲協会の集計では、直近6場所の白星のうち寄り切りが38%を占める。秩父で藤ノ川を寄り切った一番も、この形だった。
地元の宇土市立鶴城中学校を経て、熊本市西区の文徳高等学校へ進んだ。日本大学では4年生だった2023年11月、全国学生相撲選手権の個人戦で初優勝し「学生横綱」の称号を手にする。宇土市出身の学生横綱は5人目で、優勝後には宇土市役所と母校の鶴城中を訪ね、「最後の年に、先輩方が手にしてきたタイトルを得ることができてうれしい」と喜びを語った。
伊勢ヶ濱部屋への入門会見の場所に選んだのも、母校の文徳高だった。会見では「目標は大関、横綱になること」と語っている。
地元の熱も高い。新入幕で優勝争いに加わった2025年7月の名古屋場所千秋楽には、宇土市に多くの人が集まって取組を見守った。宇土少年相撲クラブの監督や鶴城中学校相撲部の関係者からは、「来場所もっと上に行ってくれると信じています」「もっと強くなれる」と激励が寄せられた。
宇土市は、元大関・正代の出身地でもある。正代は宇土市立鶴城中学校と宇土少年相撲クラブの先輩にあたる。2025年九州場所の5日目には、ともに学生横綱から角界入りした同郷の2人が初めて対戦し、義ノ富士が先輩の正代を破った。
地震で実家は全壊判定、「勝って喜ばせたい」
義ノ富士の故郷は、この夏に大きな被害を受けた。7月28日に熊本県で起きた地震で、宇土市の実家が被災し、全壊の判定を受けている。
8月の夏巡業では、秋場所へ向けて「最低限、勝ち越して三役に戻れるように。勝てば(地元の皆さんも)喜んでくれると思う」と語っていた。秋場所で勝ち越しを決めた日には「熊本に勝ち越して帰れるのでそれはよかった」と一息ついている。
秩父巡業で口にしたのも、地元への思いだった。「見に来てくれる方をがっかりさせないように。テレビで見ている方も多いので、相撲で勝って喜ばせたい気持ちが強い」。九州場所は熊本出身の義ノ富士にとって地元・九州での開催で、「九州場所は応援もすごい」と声援の大きさも口にする。
だからこそ、出足にこだわる。「中盤からではなく、初日からがんがんいきたい」。初日から5連敗した秋場所を経ての言葉だ。
九州場所で返り三役へ
九州場所は11月8日に福岡国際センターで初日を迎える。義ノ富士は秋場所の9勝6敗で、三役復帰が濃厚になった。本人も「三役に復帰できるかどうかで全然違う。返り三役になっていたらうれしい」と期待を隠さない。
2026年6月に新小結昇進を決めた際には、2桁勝利を続ければ地元・九州での場所が大関とりの場所になるとの見方もあった。名古屋場所の負け越しでその道筋はいったん途切れたが、秋場所の9勝で再び上位に戻る足場を固めた。
秋巡業はこの先も続く。7番の稽古で「まあまあ」と語った25歳が、地元の声援を受ける九州場所の土俵へ向けて、ここから調子を上げていく。
[文/構成 by スポーツライター 疾風(HAYATE)]










































































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