中井亜美のSP使用曲「道(La Strada)」とは フェリーニ映画と衣装に込めた振付師の想い【ミラノ冬季オリンピック2026】

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ミラノ・コルティナ五輪フィギュアスケート女子で、初出場の17歳・中井亜美がショートプログラム(SP)首位発進を決めた。代名詞のトリプルアクセルを成功させ、自己ベストの78.71点を記録。使用曲は開催国イタリアの巨匠フェリーニ監督の映画「道」で、衣装も作中の主人公を表現。坂本花織が2位、千葉百音が4位につけ、日本勢はフリーへ好位置を確保した。
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17歳中井亜美、衝撃の五輪デビュー SP首位発進で自己ベスト更新
フィギュアスケート女子シングルの新たな歴史が、イタリア・ミラノの氷上で刻まれた。2026年2月17日(現地時間)、ミラノ・コルティナ冬季五輪の女子ショートプログラム(SP)で、初出場の中井亜美(17)<TOKIOインカラミ>が完璧な演技を披露。自己ベストを0.71点更新する78.71点を叩き出し、首位に立った。この得点は今季世界2位に相当する高得点だ。
演技冒頭、中井は最大の武器であるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を鮮やかに着氷。1.71点の出来栄え点(GOE)を得る質の高いジャンプで、会場の空気を一瞬でつかむ。五輪でのトリプルアクセル成功は、伊藤みどり、浅田真央、樋口新葉に続く日本女子4人目。17歳での達成は、浅田の19歳を更新する日本勢最年少記録となった。
演技後のインタビューでは「自分でもびっくりするくらいの出来でした。本当に今、夢が叶ったぐらいのうれしさがあります」と、17歳らしい笑顔で喜びを語った。大舞台での圧巻の滑り出しは、世界にその名を強く印象付けた。
選曲はイタリアの魂「道」 フェリーニ映画への敬意
中井が今季のSPに選んだのは、ニーノ・ロータ作曲の「La Strada(道)」。1954年に公開されたイタリア映画の巨匠、フェデリコ・フェリーニ監督の不朽の名作のテーマ曲だ。物悲しくも温かい旋律は、孤独や純粋さ、救いといった複雑な感情を内包し、聴く者の心に深く響く。
この選曲は、振付師のデヴィッド・ウィルソンによるもの。五輪開催国であるイタリアへの敬意を示すとともに、中井の持つ透明感と表現力を最大限に引き出す狙いがあった。作曲家のニーノ・ロータは映画「ゴッドファーザー」の音楽でも知られ、「音で物語を語る天才」と評される人物。中井はその音の一つ一つを丁寧に拾い上げ、氷上で一つの物語を紡ぎ出した。
この曲は、日本のフィギュアスケート史においても特別な意味を持つ。2010年バンクーバー五輪で高橋大輔がフリースケーティングに使用し、銅メダルを獲得。その年の世界選手権はイタリア・トリノで開催され、同じプログラムで頂点に立った。16年の時を経て、同じイタリアの地で、再び「道」が輝きを放つ。
ジェルソミーナを纏う衣装 物語の世界観を氷上に
中井の演技を彩った衣装も、映画「道」への深い理解を示すものだった。赤と白の横縞模様のトップスに黒いスカート。これは、映画でジュリエッタ・マシーナが演じた主人公の少女、ジェルソミーナの服装を彷彿とさせるデザインだ。
純粋無垢でありながら、過酷な運命に翻弄されるジェルソミーナ。その姿を表現した衣装は、中井の清らかなスケーティングと融合し、プログラムの世界観をより一層深めた。SNS上ではファンから「ジェルソミーナの衣装だ」「映画へのオマージュを感じる」といった声が上がり、その細やかな演出が注目を集めた。
演技前、リンクサイドで家族の姿を探していたという中井。演技後には、手作りの応援バナーを見つけ、家族に向けてハートマークを送る場面も見られた。映画のテーマである「つながり」を、自身の演技と家族の絆に重ね合わせた。
日本勢が上位独占 坂本2位、千葉4位でフリーへ
日本女子の強さを見せつけたのは中井だけではない。3大会連続出場で今大会限りでの引退を表明している坂本花織(25)<シスメックス>は、ミスのない安定した演技で77.23点をマークし、2位につけた。演技後には「すごく楽しんで滑ることができました。満足度はかなり高いです」と、充実した表情を見せた。
ペアで金メダルを獲得した三浦璃来、木原龍一組の演技が刺激になったと語る坂本。「諦めずにやればメダルが取れるんだって、みんなが証明してくれた」と、チームの絆を力に変えた。
全29選手中、最終滑走者として登場した千葉百音(20)<木下グループ>も、大きなプレッシャーの中で実力を発揮。74.00点で4位に入り、日本勢3人全員がメダルを射程圏内にとらえてフリーに進むことになった。千葉は「『私がいま、オリンピックの最終滑走でこんなに楽しく滑れているんだ』という感謝や幸せを噛み締めながら滑りました」と、大舞台を楽しんだ様子だった。
3位にはアメリカのアリサ・リュウが76.59点でつけており、フリーでのメダル争いは僅差の戦いが予想される。
シニア1年目で掴んだ夢 「失うものはない」17歳の強心臓
新潟市出身の中井は、浅田真央の演技に憧れて5歳でスケートを始めた。シニアに本格参戦した今季、グランプリ(GP)シリーズのフランス大会で初出場初優勝を飾ると、GPファイナルでは銀メダルを獲得。一気に五輪代表の座を掴み取ったシンデレラガールだ。
シーズン開幕当初は「自分はまだ、程遠い立場にいるなと感じていた」という五輪。しかし、快進撃を続ける中で「自分も目指していいんじゃないかな」と意識が変わり、夢を目標に変えた。
初の五輪にも「正直、あまり怖さというものは自分は持っていない。失うものもないと思っている」と語る強心臓の持ち主。その言葉通り、大舞台で最高の滑り出しを見せた。メダルへの期待が高まるフリーに向けては、「ショートをすごくいい形で終えられたので、フリーも自信を持って挑みたいです。この舞台を最後の最後まで楽しむ気持ちで頑張ります」と意気込みを語る。
17歳の新星が、フィギュアスケートの歴史に新たな1ページを加える。その瞬間は、もうすぐそこまで来ている。
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

































































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