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中谷潤人、相模原の小山中学校で講演「負けほど得られるものはない」 再起戦は来年の見通し

中谷潤人、相模原の小山中学校で講演「負けほど得られるものはない」 再起戦は来年の見通し

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ボクシングの元世界3階級制覇王者・中谷潤人(28)=M・T=が10月16日、拠点とする神奈川県相模原市の相模原市立小山中学校で講演した。対象は進路選択を控える3年生約220人。5月2日の井上尚弥戦で喫したプロ初黒星について「負けほど得られるものはない」と語り、再起戦は来年になる見通しだ。

相模原市立小山中学校で3年生約220人と向き合う

講演は福祉教育の授業の一つとして開かれた。主役は相模原市在住の工藤聖真さん。東京都内の筑波大学附属視覚特別支援学校中学部に通う3年生で、病気で両目の視力を失いながら、2025年のブラインドボクシング全国大会で優勝している。2025年に続いて2026年も福祉授業の講演を受け持つことになり、相模原市社会福祉協議会福祉推進課の担当者が、工藤さんと4年前から親交のある中谷に「ダメもと」で登壇を頼んだという。

趣旨に賛同した中谷は快諾した。当日はシークレットゲストとして登場し、生徒たちは拍手で迎えた。

講演の題名は「SKY IS THE LIMIT(可能性は無限大)」。中谷自身が大事にしている言葉で、トークセッションなどを交えながら「節目」「勝負」「進路」にまつわる話を披露した。

小山中は相模原市中央区小山にある市立中学校だ。工藤さんは本来、この小山中に進む予定だったが、視力を失ったことで支援学校へ進学した。講演では、本来なら同じ校舎で学んでいたはずの同学年の生徒たちの前に立った。

中谷は過去に相模原市の小山小学校で講演したことがある。ただ、中学生、それも進路と向き合う3年生の前で話すのは初めてだった。「たくさん悩んだり、決断していかなければいけない時期だと思う。そんな皆さんに、僕の歩みを一つの参考としてお話させていただきました」と話し、「皆さん真剣に聞いてくれてありがたかったです」と目を細めた。

井上尚弥戦の初黒星「負けほど得られるものはない」

生徒たちに強く伝えたのは、初めての負けから得た教訓だった。

5月2日、東京ドームで世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)に挑み、0-3の判定負け。採点は116-112、115-113、116-112で、5万5000人が見守った32戦全勝同士の一戦で、中谷はプロ初黒星を喫した。戦績は32勝(24KO)1敗となった。

講演ではこの井上戦が最も印象に残った試合だと明かし、こう続けた。

「初めて負けを経験して、負けほど得られるものはないと感じた。勝負の世界なので勝ち負けはつきものだが、自分が思いを持って取り組んできたことに対して、周りの人は心が動くんだなと感じた。負けてどう感じて、どう行動していくかを、より大切にしてほしい」

「悲観的な負けではなかったと感じさせてもらえる5月2日だった」と振り返った中谷。勝って学べることもあるが、負けたあとにどう感じ、どう動くかがすごく大事だとして、生徒たちに「そのポイントを忘れずにいてほしい」とエールを送った。

関連記事:井上尚弥の次戦、大橋会長「(来年の)4月とか5月はない」 来年2月か3月を示唆、ハーン会長の反論とフェザー級の有力候補

共に登壇した工藤さんも、この話を胸に刻んだ一人だった。印象に残った話として井上戦のエピソードを挙げ、「負けはとても貴重なことというのが心に残っている。僕も試合に負けた時は引きずってしまう性格だった」と打ち明けている。

高校へ進まず単身渡米、中学3年の決断を語る

中谷は三重県東員町の出身。小学3年で極真空手を始め、中学1年でボクシングに転向した。プロの世界王者になるため、中学卒業後は高校へ進まず、単身でアメリカ・ロサンゼルスへ渡っている。

その決断の裏には「逆算」があった。「『高校に行ってプロの世界チャンピオンになれるか』っていう逆算をしたときに、『そこは違うな』っていう感覚があった」と当時を明かし、「迷いや不安はいっぱいありました。ただそれより、わくわくするとか思いを持ってできる方に進んだ方がいいという感覚があったので、そっちを選びました」と続ける。支えてくれたのは家族や身の回りの人たちだったという。

高校受験を控える生徒には「目標があれば、そこから逆算して何が必要かを考えられたら、それが強みになっていく」と助言した。人生の選択では楽観的に決めるのではなく、自分が情熱を持って歩めることを選んでほしいとも話している。

目標を形にする方法も具体的に示した。ノートは今もつけ続けていて、ボクシングの良かったところと悪かったところを書き、近い未来の目標を「達成したイメージ」で書き込む。「行動に移せればちょっとずつ変わってくる」。そう助言し、周囲の人に感謝する大切さも説いた。

「今後の夢」を問われると、「一人でも多くの人が僕の闘いを見て、僕がどれだけの思いを持って闘っているかを感じてもらって、感動や勇気を伝えられたらと思っている」と答えた。講演の締めくくりには「一人一人、無限の可能性があるので、それを自分自身信じて突き進んでいってもらえたら」とメッセージを残した。

相模原を拠点に戦い続ける

中谷は2015年4月、相模原市のM・Tジムからプロデビューした。以来、この街を拠点に戦い、2020年11月にWBOフライ級、2023年5月にWBOスーパーフライ級、2024年2月にWBCバンタム級の王座を手に入れて3階級制覇を成し遂げた。2025年6月にはIBFバンタム級王座も奪って2団体統一王者となり、同年9月に両王座を返上してスーパーバンタム級へ上げている。

相模原市は市内在住の中谷を「相模原市ホームタウンアスリート」に認定している。井上戦から3カ月後の8月2日には市内で再起の報告会が開かれ、本村賢太郎市長も駆けつけた。拠点とする街の中学校で話した今回の講演も、こうした街とのつながりの延長にある。

再起戦は来年の見通し、10月下旬には走り込み合宿

井上との激闘で中谷は左眼窩(がんか)底を骨折し、手術を受けた。医師の許可を得て8月1日から所属ジムでの練習を再開している。8月2日の報告会では「ゼロからのスタート。すべてレベルアップしないといけない」と口にした。

10月16日時点で、まだ実戦練習は行っていない。マスボクシング(軽めのスパーリング)などで体を動かし、週に1回はフィジカルトレーニングにも取り組む。10月下旬には神奈川県内で走り込み合宿を行う予定だ。

再起戦は来年になる見通しで、年明けに計画されていると報じられた。対戦相手や日程、会場は10月17日時点で発表されていない。

目標は変わらない。主戦場はスーパーバンタム級のまま、この階級で世界王座を取り、4階級制覇を果たすことだ。8月の報告会では井上との再戦にも意欲を見せ、「またベストの状態でリングに上がれるように日々過ごしたい」と語っていた。

「負けてどう感じて、どう行動していくか」。小山中の3年生に向けたその問いは、来年の再起戦を見据える中谷自身にも向けられている。

[文/構成 by スポーツライター 久遠(KUON)]

寄稿者

久遠(KUON)
WEBライター(主にスポーツ記事)経験7年。スポーツ、格闘技が好きで、ボクシング世界チャンピオンが主宰するジムに4年間在籍。自分でも練習を重ね、”3分”の過酷さと濃さを体で知る。観戦もライフワークで、会場には年4回ほど足を運ぶ。選手目線の実感とファン目線の熱量、その両方を武器に、試合の見どころやリングのリアルをライター経験を活かしてわかりやすく伝えます。

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