伊藤くるみ、アジア大会カヌー・スラローム女子カヤックシングルで金メダル 愛知・矢作川で頂点に立った極洋所属の経歴と戦績

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
愛知・名古屋アジア大会のカヌー・スラローム女子カヤックシングルで10月1日、伊藤くるみ(25)=極洋=が金メダルを手にした。会場は愛知県豊田市の矢作川カヌースラロームコースで、決勝の記録は107秒60。2位の中国選手に4秒10の差をつけた。
決勝は107秒60、2位に4秒10差の完勝
前回2023年の杭州大会では決勝の途中で右肘を痛め、ゴールまでたどり着けなかった。2025年1月に亡くなった恩師にささげる金メダルとなった。
大会の公式リザルトによると、決勝は1日午後2時に始まった。準決勝をトップで通過した伊藤は8人の最後にスタートし、23のゲートが並ぶ自然河川のコースを105秒60で下った。ゲートに体や艇、パドルが触れると2秒が加算されるルールで、伊藤の接触は上流向きに通過する15番ゲートでの1度だけ。合計107秒60でゴールした時点で、先に滑った7人の記録をすべて上回った。
2位はチェン・リン(中国)で、2度の接触があり111秒70。3位には接触なしで滑り切ったエカテリーナ・タランツェワ(カザフスタン)が112秒23で入った。前回杭州大会の覇者、チャン・チューハン(チャイニーズタイペイ)は113秒48で4位にとどまる。
| 順位 | 選手(国・地域) | 記録 | うちペナルティー |
|---|---|---|---|
| 1位(金) | 伊藤くるみ(日本) | 107秒60 | 2秒 |
| 2位(銀) | チェン・リン(中国) | 111秒70 | 4秒 |
| 3位(銅) | エカテリーナ・タランツェワ(カザフスタン) | 112秒23 | 0秒 |
| 4位 | チャン・チューハン(チャイニーズタイペイ) | 113秒48 | 4秒 |
勝負の流れは午前中から見えていた。同じ日の午前11時過ぎに行われた準決勝で、伊藤はペナルティーなしの103秒84を出して1位。2位のチャン・チューハンに2秒39の差をつけていた。9月29日の予選は3度の接触で116秒64の3位だったが、2日後の決勝では接触を1度まで減らしてみせた。
レース後、伊藤は「実感が湧かない。本当に夢なんじゃないかって思う」と語った。JOC(日本オリンピック委員会)の公式Xも1日午後、金メダルを伝えている。
杭州で途中棄権、亡き恩師にささげた金
伊藤にとってアジア大会は2大会連続の出場だった。2023年の杭州大会でも女子カヤックシングルの決勝に進んだが、レース中に右肘を負傷し途中棄権に終わっている。同じ頃、長く指導を受けた藤野強コーチが体調を崩し、大会に同行できなかった。伊藤は当時を「メンタル的に弱くなっていた」と明かしている。
藤野コーチは2025年1月に亡くなった。頼っていた恩師から指導を受けられなくなってから、競技への向き合い方が変わる。「川の上で戦っているのは私自身。自覚が芽生えるようになった」。2016年リオデジャネイロ五輪の男子カナディアンシングルで銅メダルに輝いた羽根田卓也と練習する機会も増え、技術を磨いた。
金メダルを手にした伊藤は、恩師へ「とてもいい報告ができる」とかみしめるように話した。
青梅で中学1年からカヌー、早大を経て極洋へ
伊藤は2001年9月25日生まれで、東京都青梅市の出身だ。カヌーを始めたのは中学1年のときで、地元の青梅市カヌー協会に所属して力をつけた。早稲田大学に進み、在学中の2022年と2023年には日本代表とU23日本代表に選ばれた。世界選手権への出場経験もある。
国内での成績も右肩上がりだった。2022年の全日本選手権は2位、2023年度の日本代表選考会では女子カヤックシングルで1位に入る。同年の特別国民体育大会(鹿児島)ではカヌースラローム種目で優勝した。
大学卒業後の2024年4月1日、水産・食品大手の極洋(本社・東京)に正社員として入社した。会社の発表によると、伊藤は入社時に「社会人として、アスリートとして更なる高みを目指し」たいとコメントし、カヌースラロームの魅力を広く伝えたいとの思いも口にしていた。
社会人2年目の2025年10月には、東京都江戸川区のカヌー・スラロームセンターで行われたNHK杯全日本カヌースラローム競技大会の女子カヤックシングルで優勝を飾る。予選と準決勝をともに1位で通過して決勝も制する内容で、2025年度は日本カヌー連盟の強化指定選手にも名を連ねた。
日本勢は男子田中が銀、女子カヤックの金は2大会ぶり
伊藤の金メダルは、この種目で日本勢として2018年ジャカルタ・パレンバン大会の矢澤亜季以来、2大会ぶりの頂点となる。アジア大会のカヌー・スラロームは2010年の広州大会から行われており、女子カヤックシングルの金は中国、日本、チャイニーズタイペイが分け合ってきた。
その矢澤亜季(システックス)も、同じレースの準決勝で106秒88の3位に入った。ただ、公式リザルト上は決勝に進まず、決勝は8つの国・地域から1人ずつの8人で争われた。日本から伊藤1人が決勝に立ち、結果を出した。
ほかの日本勢では、9月30日の男子カヤックシングル決勝で田中雄己(ミキハウス)が92秒87の2位に入り、杭州大会に続く銀メダルとなった。優勝したフー・ジャオシャン(中国)とは1秒46差だった。伊藤と同じ10月1日にあった男子カナディアンシングル決勝では足立和也(SUS)が6位。9月30日の女子カナディアンシングル決勝は矢澤が4位で、3位とは0秒93差だった。
地元開催の大会では、ほかの競技でも日本勢の金メダルが続く。セーリングでは女子49erFX級で田中美紗樹、永松瀬羅の組が頂点に立った。
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10月2日はカヤッククロス、目標はロス五輪
伊藤の大会はまだ終わらない。10月2日には、アジア大会で初めて行われるカヤッククロスに出場予定だ。複数の選手が同時にスタートし、ゲートを通過しながら着順を争う種目で、公式日程では同日午前に個人のタイム計測、午後に準々決勝から決勝までが組まれている。矢澤もこの種目にエントリーしており、日本勢2人が初代女王の座を争う。
伊藤の視線はその先にも向く。五輪にはまだ出場経験がなく、2028年ロサンゼルス五輪での初出場を目標に掲げている。「成長を感じる部分をさらにグレードアップさせて挑んでいきたい」と話した。
[文/構成 by スポーツライター 南條楓]








































































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