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松井宏樹被告に有罪判決 ─ 竹田くんモデルとされる元脳神経外科医の経歴と医療事故の全容

松井宏樹被告に有罪判決 ─ 竹田くんモデルとされる元脳神経外科医の経歴と医療事故...

赤穂市民病院の元脳神経外科医・松井宏樹被告(47)に対し、神戸地裁姫路支部は2026年3月12日、禁錮1年・執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。2020年の腰椎手術で患者の神経を誤って切断し全治不能の後遺障害を負わせた業務上過失傷害事件の判...

松井宏樹被告に有罪判決 ─ 竹田くんモデルとされる元脳神経外科医の経歴と医療事故の全容

松井宏樹被告に有罪判決 ─ 竹田くんモデルとされる元脳神経外科医の経歴と医療事故の全容

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2026年3月12日、神戸地裁姫路支部の佐藤洋幸裁判長は、赤穂市民病院の元脳神経外科医・松井宏樹被告(47)に対し、禁錮1年・執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。検察側の求刑は禁錮1年6月だった。松井被告は同病院に勤務していた2020年1月22日、当時74歳の女性患者の腰椎手術中にドリルで脊髄神経を誤って切断し、両脚の麻痺や膀胱直腸障害など全治不能の後遺障害を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われていた。2026年2月9日の初公判で起訴内容をおおむね認めたものの、「指導医にも責任がある」と主張。これに対し裁判所は「過失は明白」「被告の供述は信用できない」と退けた。松井被告は赤穂市民病院への着任後約9カ月間に計11件の医療事故に関与したとされ、うち少なくとも2人が死亡している。一連の事件は、被害者の親族が2023年にインターネット上で連載した漫画『脳外科医 竹田くん』をきっかけに広く知られるようになった。

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事件の概要 ─ 2020年1月の手術ミス

兵庫県赤穂市の赤穂市民病院で2020年1月22日、当時74歳の女性患者が腰部脊柱管狭窄症の治療のため、腰椎の一部を切除する手術を受けた。執刀したのは同病院脳神経外科医の松井宏樹被告だった。起訴状によれば、松井被告はドリルで腰椎を切削する際、出血に対する十分な止血措置を行わず、術野の視認性が確保できていない状態のまま切削を続行。その結果、硬膜を損傷し、脊髄神経を巻き込んで切断した。女性は両脚の麻痺、膀胱直腸障害(排尿・排便の感覚喪失)など全治不能の重度後遺障害を負った。

2024年12月27日、神戸地検姫路支部は松井被告を業務上過失傷害罪で在宅起訴した。手術で助手を務めた上司の科長は不起訴となっている。医師の医療行為が刑事裁判で審理されるのは異例のことである。

初公判から判決まで ─ 裁判の経過

2026年2月9日、神戸地裁姫路支部で初公判が開かれた。松井被告は起訴内容について「基本的には認めます」と述べ、事実関係をおおむね認めた。法廷では手術の様子を記録した映像が大型モニターに映し出され、出血で視野が不十分な中でドリルが神経に達する場面が再生された。

TBS NEWS DIGの報道によると、2月12日の被告人質問では松井被告は「全て私の責任です。申し訳ありません」と謝罪した。一方で「チームでやっているので私一人だけが悪いとなるのはおかしい」とも述べ、助手を務めた上司の指導医にも責任があると主張した。FNNの報道によれば、松井被告は指導医が「日が暮れる」と急かし、よく削れるスチールドリルへの変更を指示したことがミスにつながったと説明した。しかし検察側の質問に対しては「(水かけや吸引の問題は)直接原因とは別問題」と説明を一転させる場面もあった。また検察側は、松井被告が裁判に向けてSNS上で「無罪を主張して争うべきか」とアンケートを取っていたことも法廷で明らかにした。

2月18日の論告求刑では、検察側は「出血に対して止血を行うのは基本中の基本で、被告は十分な止血を行わなかった。視界が不良なのに切削力の強いスチールドリルで切削を続けた」と過失の重大性を指摘し、禁錮1年6月を求刑した。弁護側は、ドリルの使用を命じたのは指導医であり被告だけの責任にするのは不適当と反論し、「漫画などによって既に十分に社会的な制裁を受けている」として刑の減軽を求めた。

判決 ─「過失は明白」「責任転嫁の姿勢に疑問」

2026年3月12日、佐藤洋幸裁判長は松井被告に禁錮1年・執行猶予3年の判決を言い渡した。

赤穂民報の報道によれば、裁判長は判決理由で事故の原因を「止血の回数が少なすぎたため、術野に血液等が貯留し、どの部分を切削しているのか理解困難な状況の中、なおもドリルで切削を行った結果」と認定した。助手を務めた科長の作業が不適切だったために事故が起きたとする被告側の主張については「被告の供述は信用できない」と退け、「仮に科長の作業が不適切ないし不十分なために十分な止血措置ができなかったのであれば、ドリルによる切削を中断して、科長による作業の進捗を待つなどすべきだった」と一蹴した。さらに被告の法廷での態度について「科長に一部責任を転嫁するかのような発言」とし、「自身の過失の結果として被害者に多大な苦痛を与えているという現実に真摯に向き合えているのか、疑問なしとはいえない態度」と指摘。「罰金刑程度にとどまる事案とは到底言えない」と断じた。

山陽新聞(共同通信)も「視認性が十分確保できるまですべきだった。基本的な注意義務を怠ったと言わざるを得ない」との判決理由を報じている。

一方、求刑より減刑して執行猶予を付けた理由として、赤穂民報によれば、裁判長は被告が医師として就労することが事実上不可能な状態になっていること、民事訴訟判決により賠償に応じていること、法廷で過失を認めて謝罪したことに加え、「経験の乏しい被告をバックアップすべきチームが機能していなかった面は否めず、被告に刑事責任を問うにも限度がある」と述べ、病院や診療科の組織的責任にも言及した。

被害者家族の訴え ─「母に手術を勧めたことを一生後悔する」

FNN(関西テレビ)の報道によれば、審理の最終日には被害者女性の長女が意見陳述を行った。長女は「母に手術を勧めてしまったことは、悔やんでも悔やみきれず、一生後悔の念が消えることはないと思います」と語った。また手術動画について「血の海の中に、何処を削っているのかもわからない状態でドリルが突っ込まれている様子が映っていました。素人目に見ても、あれでは神経切断事故が起きて当たり前だと思います」と訴えた。

被害者の女性は現在も両脚の麻痺に苦しんでおり、家族によれば「痛みを治してくれ。足を動くようにしてくれ。そうじゃなければ死ぬ」と繰り返し訴えているという。

長女は松井被告のSNS上の発信についても言及した。松井被告はSNS「X」(旧Twitter)に「脳外科医竹田くんがバズって私が起訴された」と投稿しており、長女は「被害者家族が描いた漫画が原因で起訴されたという主張をし、自分の責任と向き合わず、被害者家族のせいで社会的制裁を受けているという構図を作ろうとしている」と批判した。

松井被告の経歴と赤穂市民病院での医療事故

複数のウェブメディアによれば、松井宏樹被告は横浜市立大学医学部を卒業後、2009年に医師免許を取得。その後、滋賀医科大学の脳神経外科で勤務・研修を重ねた。2019年7月に赤穂市民病院の脳神経外科に着任した。

神戸新聞が2025年5月14日の民事判決報道で伝えたところによれば、松井被告は着任後約9カ月間に携わった手術で計11件の医療事故に関与したとされる。なお、読売新聞が報じた赤穂市民病院が公表した件数は8件である。読売テレビ(NTV)などは、このうち少なくとも2人の患者が死亡したと報じている。NEWSポストセブンは3名の死亡を報じており、報道機関により件数に差異がある。病院は2020年3月に松井被告に対して手術の執刀を禁止し、松井被告は2021年8月に同病院を依願退職した。

退職後、赤穂民報の報道によれば、松井被告は大阪市の医誠会病院を経て、2023年6月から吹田徳洲会病院に勤務したが、同病院の公式通知によると、2025年1月に診療業務を外れ、同年10月31日付で退職している。

赤穂市民病院における主な医療事故

時期概要結果
2019年9月90代女性に血栓回収術を実施術後出血、重度意識障害を経て死亡
2019年10月頸椎手術で硬膜損傷患者に後遺障害
2019年12月頸椎椎間板ヘルニア切除術嚥下機能喪失
2020年1月22日腰椎手術でドリルにより脊髄神経切断(本件起訴事案)両脚麻痺・膀胱直腸障害(全治不能)
2020年2月19日70代男性の脳腫瘍摘出術広範な脳梗塞、重度意識障害を経て死亡
2020年2月下旬80代女性に血栓回収術を実施術中出血、重度意識障害、3月に死亡

※上表は報道に基づく主な事案の抜粋であり、全件を網羅するものではない。事故件数は病院公表の8件のほか、神戸新聞によれば民事裁判では計11件が認定されている。死亡件数はNTV等が「2人」、NEWSポストセブンが「3名」と報じており、報道機関により差異がある。

漫画『脳外科医 竹田くん』と社会的反響

2023年1月から7月にかけて、被害者の親族が「はてなブログ」上でウェブ漫画『脳外科医 竹田くん』を連載した。赤穂市民病院の医療事故をモデルにしたフィクションとして描かれた同作は、SNS上で大きな反響を呼び、医療安全の問題に対する社会的関心を高めた。2025年2月には、作者が本件事故の被害者家族であることを公表し、事件と漫画のつながりが明らかになった。

赤穂民報が2026年3月2日に報じたところによれば、松井被告は被害者の長女や漫画を描いた親族を名誉毀損の疑いで刑事告訴したが、不起訴処分となっている。

民事訴訟 ─ 約8900万円の賠償命令

刑事裁判とは別に、被害者の女性とその家族は松井被告と赤穂市(病院設置者)に対し約1億4000万円の損害賠償を求めて民事訴訟を提起した。2025年5月14日、神戸地裁姫路支部は「止血等により視認性の確保が十分でないのに骨の切除を進めるなど、注意義務違反は著しい」として、松井被告と赤穂市に約8900万円の支払いを命じ、判決は確定している。

今後の焦点 ─ 医師免許の行方

NTVの報道によれば、松井被告は被告人質問で「外科医としては今後活動しないが、医師としては復帰できるならしたい」と述べている。有罪判決の確定を受け、厚生労働省の医道審議会が医師免許の取消しや停止を含む行政処分を検討する可能性がある。本事件は、医療安全管理体制のあり方や、いわゆる「リピーター医師」への対応について、改めて社会に問いを投げかけている。

本記事は、赤穂民報、FNNプライムオンライン(関西テレビ)、読売テレビ(NTV)、TBS NEWS DIG、山陽新聞(共同通信)、NEWSポストセブン、読売新聞、神戸新聞、m3.com等の報道に基づき作成した。事実関係は2026年3月12日時点の情報による。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

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