佐藤綾野とは何者か?日銀審議委員に選ばれた”高圧経済論者”で青山学院大学教授の経歴と政策スタンスを解説

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政府は2026年2月25日、日銀の新たな審議委員に青山学院大学教授の佐藤綾野氏を起用する人事案を国会に提示した。佐藤氏は金融緩和を通じて経済成長を促す「高圧経済論」の専門家として知られる。市場では金融緩和に前向きな「ハト派」と目されており、今後の日銀の金融政策、特に利上げのペースに影響を与える人事として注目が集まる。
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日銀審議委員に”高圧経済論者”を起用
政府は2月25日、日本銀行の金融政策を決める政策委員会の審議委員に、青山学院大学法学部教授の佐藤綾野氏(57)と中央大学名誉教授の浅田統一郎氏(71)を充てる人事案を衆参両院の議院運営委員会に提示した。3月末(3月31日)に任期満了を迎える野口旭氏と、6月末(6月29日)に任期満了を迎える中川順子氏の後任となる。国会の同意を経て、正式に就任する見通しだ。
佐藤氏は、金融緩和と財政出動で需要を喚起し、経済成長を目指す「高圧経済論」の論者として知られる。この人選は、市場関係者の間で金融緩和の継続を志向する「ハト派的」な人事との見方が広がった。
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異色の経歴、生物農芸から経済学の世界へ
佐藤氏の経歴は、経済学者として異色だ。日本女子大学家政学部で生物農芸学を専攻したのち、早稲田大学政治経済学部に進み、経済学の道へ転身した。1999年に同大学を卒業後、大学院に進学し、2005年に博士課程を単位取得退学、後に博士(経済学)の学位を取得している。
そのキャリアは学術研究と政策現場の両方にまたがる。内閣府の経済社会総合研究所で客員研究員を務めた経験を持つ。新潟産業大学、高崎経済大学での教職を経て、2022年4月からは青山学院大学で教授として教鞭を執る。専門は国際金融論や経済政策論で、2021年からは郵政民営化委員会の委員も務めている。
政策スタンスの核心「高圧経済」とは
佐藤氏の政策スタンスを理解する上で鍵となるのが「高圧経済」という考え方だ。これは、金融政策や財政政策によって意図的に需要が供給を上回る状態を作り出し、経済全体の成長を促す経済理論を指す。需要超過の状態を続けることで、企業は投資や賃上げに動き、失業率の低下や生産性の向上が期待できると考える。
佐藤氏はこの分野の専門家の一人。リフレ派の論客として知られる原田泰氏らが編纂した書籍『高圧経済とは何か』では、第5章『高圧経済が労働生産性に与える影響――OECD加盟国を中心としたパネルデータ分析』を執筆した。この中で、OECD加盟国のデータを分析し、高圧経済が生産性に与える影響を論じている。こうした背景から、市場では金融緩和に前向きな「ハト派」と見なされるようになった。
しかし、佐藤氏自身は2024年7月の日銀による利上げ決定後、利上げを急ぐ必要はないとの見解を示していた。このため、一部ではリフレ派とは一線を画すとの指摘もある。
市場は「ハト派」人事に円安・株高で反応
今回の人事案が伝わると、金融市場は敏感に反応した。外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが強まり円安が進行。株式市場では日経平均株価が上昇した。市場がこの人事を「金融緩和の継続」を示唆するものと受け止めた結果だ。
SBI新生銀行の森翔太郎氏は「高市首相の意向が反映されたハト派寄りの人選」と分析。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也氏は、佐藤氏を「高圧経済論者」と評し、「金融政策に関してはかなりハト派との印象だ」と述べた。市場では、これまでタカ派寄りと見られていた政策委員会のバランスが、今回の人事で中立に近づくとの観測が浮上する。
一方で、大和証券の末広徹氏は、学者出身である両氏が市場の動きに対して理論に基づいた発言をすることで、かえって市場の変動性を高める可能性を指摘した。
今後の金融政策への影響は
佐藤氏が審議委員に就任すれば、日銀の金融政策運営にどのような影響を与えるのか。市場関係者の間では、利上げ路線そのものは維持されるものの、そのペースはより慎重になるとの見方が大勢を占める。
SBI新生銀行の森氏は、今回の人事を受けて「目先の3月ないし4月会合での追加利上げの可能性は低下した」と分析し、次回の利上げは7月会合になるとの予想を維持した。経済や物価への影響を丁寧に見極めながら、政策判断が下される局面が続くだろう。
佐藤氏と浅田氏の考えが、植田和男総裁が率いる日銀の政策運営にどう織り込まれていくのか。今後の講演や国会での所信聴取における発言が、その方向性を占う上で重要な材料となる。
[文/構成 by さとう つづり]



























































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