モンスターが描く次なる舞台
一方の井上も、難敵を退けた安堵感の中、次なる目標をはっきりと見据えていた。試合後のインタビューでマイクを握ると、会場を去ろうとしていた中谷を呼び止めるという異例の行動に出る。
「中谷くーん! あと1勝! 12月、お互い頑張って来年、東京ドームで会いましょう!」
これは単なるリップサービスではない。1万7000人の観衆と、全国のファンが見守る中での、日本ボクシング史上最大の一戦に向けた、王者からの正式な「招待状」であった。この呼びかけに、会場のボルテージは最高潮に達した。
夢の対決、現実への道筋
この「ドリームマッチ」は、決して夢物語ではない。中谷はすでにバンタム級の王座を返上し、井上のいるスーパーバンタム級への転向を表明している。 物理的な障壁は、着実に取り払われつつあるのだ。両者は12月にサウジアラビアでそれぞれ別の試合を行う計画も浮上しており、そこで互いに勝利を収めることが、東京ドーム決戦への最終切符となる。
アフマダリエフ戦で見せた井上の「賢さ」。それをリングサイドで目の当たりにし、闘志を新たにした中谷。怪物の牙城を崩すべく、完璧なる挑戦者が静かに牙を研いでいる。二人の物語は、もう始まっている。
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]
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