鈴木桂治監督、世界柔道から帰国し「何で負けたのかが分からない」 新井道大は有効負けで銀

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
柔道日本代表の鈴木桂治男子監督が13日、アゼルバイジャン・バクーでの世界選手権を終えて成田空港に帰国し、復活した「有効」の判定範囲に疑問を投げかけた。男子100キロ級決勝で新井道大は延長戦の末、相手の大内返しを有効と取られて2年連続の銀。鈴木監督は「我々から見たら、何で負けたのかが分からない」と語り、大会後のアンケートで現場の意見として伝える考えを示した。
帰国した鈴木監督「有効の幅が非常に広すぎる」
日本代表選手団はきのう13日、バクーから成田空港に戻った。到着後、取材に応じた鈴木監督の口から出たのは、大会の収穫よりも判定への違和感だった。
「有効の幅が非常に広すぎるのと、果たしてこれが正解なのかと、疑問が残る場面が多々ありました」
指導による決着を減らし、技で勝負をつける。国際柔道連盟(IJF)が有効を復活させた狙いには、鈴木監督も一定の理解を示している。「指導で勝敗がつくのはつまらない、というのは分かる」と前置きしたうえで、「柔道を魅力的なものにするという言葉とは、ちょっと相反しているんじゃないかと感じてしまう」と続けた。
技をかけて、それが効いたかどうかを見るのが妥当な判定だという考えも口にした。転んでも、滑っても有効になるようでは、柔道とは違う勝敗の決まり方になってしまう。2004年アテネ五輪の100キロ超級で金メダルを取り、2021年9月から男子代表を率いる指揮官の言葉は率直だった。
新井道大の決勝、映像では相手が先に畳に付いたようにも見えた
疑問が集中したのは、現地9日の男子100キロ級決勝だ。新井道大(東海大)はパリ五輪銀メダルのイリア・スラマニゼ(ジョージア)と延長戦までもつれる勝負を演じた。
新井が仕掛けて両者が倒れ込んだ場面で、一度は新井の技ありが宣告された。しかし映像判定で取り消され、逆にスラマニゼの大内返しが有効と認められ、試合が終わった。
報道によると、スロー映像ではスラマニゼの右肩が先に畳に付き、そのあと新井の左手、胸の順にうつぶせで落ちたように見えた。新井は勝ったと思ってガッツポーズを見せていただけに、判定を聞くと両手を広げ、困惑した表情を浮かべた。SNSでも判定を疑問視する声が上がった。
鈴木監督は「我々から見たら、何で負けたのかが分からない」と振り返った。判定の説明は、映像をコマ送りにして止めた一場面を示されるような形だったという。
各国の監督からも「こんな試合内容でハッピーなのか」
疑問を抱いたのは日本だけではなかった。新井の敗戦後、いくつもの国の監督が鈴木監督のもとを訪れ、「判定を含めて、こんな試合内容でハッピーなのか」と声をかけてきたという。
各国の監督からは「みんなで声を上げていくしかない」と言われたと明かし、大会後のアンケートを使って現場の意見として届けたいとした。
有効は2017年にいったん廃止されたが、IJFは2025年2月のグランドスラム・パリ大会から再び採り入れた。寝技では10秒の抑え込みで技ありとなる一方、5秒でも有効が入る。受け手がうつぶせに落ちても、腹部か骨盤の左右両側が畳に付いていなければポイントと見なされるなど、判定の幅は広がった。今年に入ってルールはさらに見直され、有効の範囲は一段と広くなっている。バクーでは、際どい判定が目立つ大会になった。
新井は判定を受け入れ「相手が強くて自分が弱かった」
当の新井は、判定を言い訳にしなかった。取材に対し「相手が強くて自分が弱かった。ただそれだけ。最後は審判が決めることなので」と語っている。
延長戦では左の大内刈りで勝負に出たが、最後に相手の道着から両手を離してしまった。その一瞬を悔やみ、紙一重でも負けは負けだと自らに矛先を向けた。
新井は昨年の世界選手権でも決勝で敗れて銀メダルだった。今大会は準決勝で2023年の世界王者アルマン・アダミアン(ロシア)に一本勝ちしており、頂点まであと一歩のところまで来ている。2年続けて世界一を逃した悔しさは、次の舞台へ持ち越しとなる。
日本は個人戦12個のメダル、ロス五輪へ残る課題
チーム全体で見れば、結果は悪くない。日本は個人戦で男子が金3個を含む7個、女子が金4個を含む5個のメダルを手にした。最終日の混合団体では決勝でロシアを破り、2年ぶりに世界一の座を取り戻した。
2028年ロサンゼルス五輪まではあと2年足らず。今の基準のまま五輪を迎えれば、有効を巡る際どい判定が大舞台で勝敗を分ける場面は十分に起こりうる。
技で勝負を決めるための有効が、何で負けたのかが分からない結末を生む。現場から上がり始めた声に、IJFがどう向き合うのか。日本の重量級を背負う新井にとっても、判定の行方は見過ごせない話になる。
[文/構成 by スポーツライター 南條楓]














































































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