MEDIA DOGS

新着記事

上野動物園パンダ返還はなぜ?1972年カンカン来日以来54年ぶり日本でパンダがいなくなる

上野動物園パンダ返還はなぜ?1972年カンカン来日以来54年ぶり日本でパンダがいなくなる

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

東京・上野動物園の双子パンダ「シャオシャオ」と「レイレイ」が2026年1月27日、中国へ出発した。これにより、1972年の日中国交正常化を機に「カンカン」「ランラン」が来日して以来、約54年ぶりに日本国内で飼育されるジャイアントパンダが不在となる。その理由や背景には、所有権を持つ中国との貸与契約満了に加え、近年冷え込む日中関係を反映した「パンダ外交」の側面が存在する。

↓ 詳細が気になる方は、このまま下へ ↓

双子パンダ本日中国へ、半世紀の歴史に幕 – 1972年以来初の「パンダ不在」

東京都立恩賜上野動物園(台東区)で飼育されていたジャイアントパンダの双子、シャオシャオ(オス・4歳)とレイレイ(メス・4歳)が、2026年1月27日、所有権を持つ中国へ返還されるため、同園を出発した。これにより、1972年10月28日にカンカンとランランが来日して以来、約54年間維持されてきた日本国内でのパンダ飼育が途絶え、歴史的な「パンダ不在」の時代が始まった。

東京都の発表によると、2頭の返還は中国野生動物保護協会との協定に基づくもの。2025年12月15日に返還が正式に公表され、観覧最終日となった2026年1月25日には、抽選で選ばれた多くのファンが最後の別れを惜しんだ。最終日の観覧倍率は24.6倍に達し、その関心の高さを物語る。

上野動物園は27日当日、搬出作業のため園内の一部通路を一時的に通行止めにする措置を取った。また、安全な輸送路確保のため、沿道での見送りを控えるよう呼びかけた。

「パンダ外交」の現実 – 友好の象徴から関係悪化を映す鏡へ

日本のパンダの歴史は、日中関係と密接に連動してきた。1972年のカンカンとランランは日中国交正常化を記念して「贈与」され、日本中に一大ブームを巻き起こした。しかし、中国が1981年にワシントン条約に加盟して以降、希少動物の商業取引が禁止され、パンダは「共同研究」を目的とした「貸与」へと完全に移行した。

世界の動物園にいる全てのパンダの所有権は中国が保持しており、海外の動物園は年間1億円規模とされる費用を支払い、期限付きで借り受ける形となる。日本で生まれた子どもでさえ所有権は中国に帰属し、一定の年齢で返還されるのが原則だ。この仕組みは、中国がパンダを「国家資産」として管理し、国際関係における強力なソフトパワー、すなわち「パンダ外交」の手段として活用する基盤となっている。

近年、日中関係は急速に冷え込んでおり、今回の返還ラッシュと新規貸与の停止はその影響を色濃く反映している。2025年11月には中国共産党系のメディアが、日中間の緊張が続けば新規貸与を停止する可能性を示唆する専門家の見解を報道。パンダの貸与が、二国間関係の温度を測るバロメーターとして機能している現実が浮き彫りになった。

日本におけるパンダ飼育の軌跡と経済効果

3施設で紡がれた54年の歴史

日本のパンダ飼育は、上野動物園、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド、そして神戸市立王子動物園の3施設が中心となって担ってきた。上野動物園では1972年のカンカン・ランラン以降、計15頭以上が飼育され、3度の大きなパンダブームを創出した。特に2017年に生まれたシャンシャンは社会現象ともいえる人気を博した。

アドベンチャーワールドは1994年から日中共同繁殖研究を開始。父親の「永明」と母親の「良浜」を中心に「浜家(はまけ)」と呼ばれる大家族を築き、世界最多クラスの繁殖実績を誇った。しかし、2025年6月までに全てのパンダが中国へ返還された。神戸市立王子動物園では、阪神・淡路大震災からの復興の象徴として2000年に来園した「タンタン」が2024年3月に亡くなるまで、多くの市民に愛され続けた。

年間195億円の損失試算も – パンダが動かす地域経済

パンダの存在は、計り知れない経済効果をもたらしてきた。関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算によると、2021年に上野動物園で生まれたシャオシャオとレイレイがもたらす経済効果は約308億円に上る。一方で、今回の返還により日本からパンダが不在となることで、上野エリアで年間約154億円、先にパンダがゼロになった和歌山県白浜町で約41億円、合わせて年間約195億円の経済的損失が生じるとの分析もある。

上野の百貨店「松坂屋上野店」はパンダ関連イベントを長年開催しており、返還に際してはファンの心情を考慮した企画を検討。地元商店街にとっても、パンダは観光客を呼び込む最大の目玉であり、その不在が地域経済に与える影響は小さくない。

「ありがとう」「寂しい」- ファンから惜別の声相次ぐ

返還の発表から最終観覧日に至るまで、SNSや報道を通じてファンからは別れを惜しむ声が絶えなかった。「パンダロス」という言葉が広がり、「癒やしと思い出をありがとう」「中国でも元気で」といった感謝のメッセージが数多く投稿された。中には「政治の道具にされるパンダが気の毒だ」と、複雑な心境を吐露する声も見受けられる。

10年以上にわたり毎日パンダを撮影し、ブログ「毎日パンダ」で発信してきた高氏貴博さんは、報道機関の取材に対し「毎日家に帰れば家族がいたのが、留学しちゃうような気持ち」と寂しさを語りつつも、「明るい気持ちで、笑顔で送り出してあげたい」とコメント。最終観覧日には、抽選に外れたファンも「同じ空気を吸いたい」と動物園のゲート前に集まる光景が見られた。

東京都の小池百合子知事は2025年12月15日の会見で、「ジャイアントパンダの繁殖や研究について大きな成果を上げてきた。様々な思いがあるかと思うが温かく見送っていただきたい」と都民に呼びかけた。

パンダ再来日はいつか – 鍵は日中関係の改善

日本からパンダの姿が消えた今、最大の焦点は「いつ再びパンダが来日するのか」である。東京都は中国側に対し、共同研究プロジェクトの継続と新たなパンダの貸与を希望する意向を伝えているが、現時点で具体的な見通しは立っていない。中国外務省の報道官は2026年1月21日の会見で、新規貸与には直接言及せず、「日本の方々が中国にパンダを見に来ることを歓迎する」と述べるにとどめた。

専門家の間では、パンダの再来日は日中関係の改善が不可欠との見方が支配的だ。中国事情に詳しいジャーナリストの周来友氏は、2026年11月に中国で開催予定のアジア太平洋経済協力会議(APEC)が関係改善の契機となり、パンダ貸与の話し合いが進む可能性を指摘している。

上野動物園は、パンダ舎を他の動物に転用せず、当面は現状のまま維持する方針だ。飼育展示課の担当者は「いつかまた、パンダに戻ってきてほしい」と願いを語る。パンダ不在の時代は、日本社会が外交、経済、そして動物との向き合い方まで含めた「パンダの存在意義」を改めて問い直す期間となる。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

コメントはこちら

*
*
* (公開されません)

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

Return Top