「Twitter復活か?」米企業が商標申請 青い鳥“奪還”説がSNSで急拡大 なぜ今?時系列で振り返る

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米国の新興企業が、イーロン・マスク氏率いるX社が「Twitter」および「Tweet」の商標を放棄したと主張し、米国特許商標庁(USPTO)に登録抹消を申請した。この企業は元Twitterの商標担当弁護士が主導しており、ブランドの復活を目指している。X社は商標を積極的に使用していないため法的に不利な可能性があるが、「残存営業権」を盾に争うことも可能であり、今後の動向が注目される。
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消えた「青い鳥」の商標、元担当弁護士が「復活」目指し申請
かつて世界中の人々が利用したソーシャルメディア「Twitter」とその象徴であった「青い鳥」。そのブランドが、法的な争いの舞台に上がっている。2025年12月2日、米バージニア州の新興企業「オペレーション・ブルーバード社(Operation Bluebird, Inc.)」が、X社(旧Twitter社)が保有する「Twitter」および「Tweet」の商標登録を抹消するよう、米国特許商標庁(USPTO)に申し立てたことが明らかになった 。申請の根拠は、X社がブランド名を「X」に変更して以来、旧商標を意図的に使用しておらず、法的に「放棄」された状態にあるというものである。驚くべきことに、この動きを主導しているのは、かつてTwitter社で商標やドメイン名を担当していた元弁護士、スティーブン・コーツ氏である。
背景:イーロンマスク氏による買収から「X」へのリブランディング
この問題の根源は、実業家イーロン・マスク氏によるTwitterの劇的な買収と、その後の急進的な改革にある。マスク氏は2022年10月27日、約440億ドル(当時のレートで約6兆4000億円)でTwitter社の買収を完了。その後、大規模な従業員解雇やコンテンツモデレーション方針の変更など、次々と改革を断行した。
そして2023年7月、マスク氏はTwitterを「X」へとリブランドする計画を発表。自身のXアカウントで「我々は間もなくツイッターブランドに、そして徐々に全ての鳥に別れを告げるだろう」と投稿し、ブランドの終焉を宣言した 。この宣言通り、象徴的だった青い鳥のロゴは黒い「X」に置き換えられ、「ツイート」は単なる「ポスト」へと呼び名が変わった 。
決定打となったのは、2024年5月17日のドメイン完全移行である。この日をもって、`twitter.com`へのアクセスは全て`x.com`へリダイレクトされるようになり、「Twitter」という名称が商業的に使われる場面は事実上消滅した。オペレーション・ブルーバード社は、これら一連の行為が、商標を再利用する意図がないことを示す明確な証拠だと主張している。
法的攻防の焦点は「商標の放棄」と「残存営業権」
今回の申請が認められるかどうかは、米国の商標法における「放棄」の解釈が鍵となる。
商標放棄の成立要件
米国の商標法(ランハム法)では、商標が「放棄」されたと見なされるには、2つの要件が必要である。
- 不使用: 商標の商業的な使用が中止されていること。
- 再開の意図がないこと: 所有者がその商標の使用を再開する意図がないこと。
特に、3年間の継続的な不使用は、放棄の「一応の証拠(prima facie evidence)」と見なされる。オペレーション・ブルーバード社は、X社によるロゴの削除、ドメインの移行、そしてマスク氏自身の発言が、「再開の意図がない」ことを明確に示していると主張する。知的財産専門の弁護士ジョシュ・ガーベン氏は、X社がもはや使用していない商標の所有権を擁護するのは困難だろうと指摘している。
X社の対抗策:「残存営業権(Residual Goodwill)」
しかし、たとえ商標登録が抹消されたとしても、X社が完全に無力になるわけではない。法専門家が指摘するのは、「残存営業権」という概念だ。これは、ブランドが公式には使われなくなっても、消費者の心の中に残るブランドとの結びつきを指す。
今、一般の人に「Twitterを所有しているのは誰か?」と尋ねれば、大半が「イーロン・マスク」あるいは「X社」と答えるだろう。この強力なブランド認知が、X社の武器となり得る。X社は、たとえ登録がなくても、オペレーション・ブルーバード社が「Twitter」の名称を使用することで消費者に混乱が生じると主張し、商標権侵害で訴訟を起こす可能性があるのだ。スタンフォード大学法学部のマーク・レムリー教授も、X社が何らかの正当な商業利用(アーカイブされた製品ページなど)を示せれば、強力な防御になると述べている。
この問題は、結局のところ「マスク氏が、自ら捨てたブランドを守るために数百万ドル規模の訴訟費用を投じるか否か」という経営判断に行き着く。オペレーション・ブルーバード社は、その答えが「ノー」であることに賭けているのである。













































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