「自分自身を見つめた一年」

同インタビューで、彼女は2025年を「自分自身をたくさん見つめることができた一年だった」と振り返っている。「忙しいという言い訳で後回しにしたり、見て見ぬふりをして通り過ぎていた心と初めて向き合った」と述べ、内省的な時間を過ごしたことを明かした。

この言葉は、外部からの評価や期待に惑わされることなく、自身の内なる声に耳を傾けようとする真摯な姿勢の表れであろう。デビュー以来、トップ女優として走り続けてきた彼女が、30代後半を迎え、キャリアだけでなく一人の人間としての成熟を深めている様子がうかがえる。結婚という社会的な節目よりも、まずは自分自身を理解し、慈しむこと。それが、今の彼女にとって最も「大事なもの」なのかもしれない。

デビューから20年、女優ハン・ヒョジュの軌跡

絶え間ない噂が立つのは、彼女がそれだけの影響力を持つ俳優であることの裏返しでもある。彼女のキャリアを振り返ることで、なぜ人々が彼女に魅了されるのか、その理由が見えてくる。

華々しいデビューとトップスターへの道

2003年、「ミスにっこり（ビングレ）選抜大会」で大賞を受賞したことをきっかけに芸能界入り。シットコム『ノンストップ5』（2005年）で本格的に女優デビューを果たすと、瞬く間に頭角を現した。

彼女の名を不動のものにしたのは、ドラマ『華麗なる遺産』（2009年）と『トンイ』（2010年）である。『華麗なる遺産』は最高視聴率47.1%を記録する国民的ドラマとなり、彼女はイ・スンギと共に主演として大きな人気を博した。続く時代劇『トンイ』では、低い身分から王の側室となる主人公を熱演。この作品での演技が高く評価され、2010年のMBC演技大賞で、わずか23歳という若さで最高賞である「大賞」を受賞した。これは、20代の俳優としては異例の快挙であった。

スクリーンでの活躍と演技の深化

テレビドラマでの成功に留まらず、彼女は映画界でも着実にキャリアを積み重ねてきた。映画『王になった男』（2012年）ではイ・ビョンホン演じる王が心を寄せる王妃役を、『監視者たち』（2013年）では新人刑事役を演じ、青龍映画賞で主演女優賞を受賞。そして、多数の俳優が日替わりで一人の男性を演じるというユニークな設定の映画『ビューティー・インサイド』（2015年）では、その中心で揺れ動くヒロインを見事に演じきった。

近年では、アメリカのドラマ『トレッドストーン』（2019年）でハリウッドに進出し、アクション演技にも挑戦。そして前述の『ムービング』（2023年）では、超能力を持つ元国家情報院の要員であり、息子を守る母親という複雑な役柄を演じ、再びその演技力の高さを世界に証明した。

論争と向き合う姿勢

輝かしいキャリアの一方で、彼女はいくつかの論争にも直面してきた。しかし、その度に彼女と所属事務所は、毅然とした態度で事実関係を明らかにしてきた。

2019年、韓国社会を揺るがした「バーニング・サン事件」に関連し、事件の舞台となったクラブのイベントに協賛した化粧品ブランドのモデルであったことから、「30代の女優A」として名前が挙がった。しかし、所属事務所のBHエンターテインメントは即座に「ハン・ヒョジュは当該のイベントには出席しておらず、バーニング・サンというクラブに一度も出入りしたことはない」と公式に否定し、虚偽事実の流布に対して強力な法的措置を取ることを発表した。

また、2013年には元マネージャーらによる私生活写真の公開をネタにした脅迫事件も発生。この時も、事務所は「非難されるような行動をした事実はない」として警察に通報し、犯人グループは逮捕された。これらの対応は、不確かな情報に対して沈黙するのではなく、事実をもって潔白を証明するという、彼女と事務所の一貫した姿勢を示している。

一人の人間としての深化

ハン・ヒョジュに関する結婚の噂は、そのほとんどが根拠のないフェイクニュースか、あるいは彼女の優れた演技力に起因するファンの願望の表れである。2025年11月現在、彼女は未婚であり、自身のキャリアと内面に向き合う充実した時間を過ごしている。

「いつ結婚するのか」という外部からの問いかけに対し、彼女は「愛とは何か」「自分にとって大切なものは何か」という、より深く、普遍的な問いを自身に投げかけているようだ。デビューから20年を経て、単なる「美しい女優」から、深い思索と人間味を兼ね備えた表現者へと進化し続けるハン・ヒョジュ。彼女が今後、どのような演技を、そしてどのような人生の物語を見せてくれるのか。その歩みを、静かに見守りたい。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]