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島田敏「初めて聴いたときは目が点になりました」 ブロリーの声で生成AIが歌う『うっせぇわ』

島田敏「初めて聴いたときは目が点になりました」 ブロリーの声で生成AIが歌う『うっせぇわ』

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

「ドラゴンボール」シリーズでブロリーを演じる声優の島田敏が10月15日、日本俳優連合(日俳連)の記者会見に登壇した。ブロリーの声を再現した生成AIが、Adoの「うっせぇわ」を歌う音声を聴いた経験を明かし、「初めて聴いたときは目が点になりました」と語った。日俳連は同日、声の生成AI利用に関するガイドラインを発表している。

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日俳連の会見で語った「目が点」の体験

会見は10月15日、東京・新宿区の芸能花伝舎で開かれた。日俳連が「音声に関する生成AI利用ガイドライン」を発表する場で、副理事長の池水通洋、常務理事の島田敏、佐々木優子らが壇上に並んだ。孫悟空役で知られる副理事長の野沢雅子は、スケジュールの都合で欠席し、ビデオメッセージを寄せている。

島田はまず、自分がどの役を演じてきたかから話を始めた。テレビアニメや劇場版が数多く作られてきた「ドラゴンボール」シリーズで、ブロリーを演じていると説明。そのうえで、あるときブロリーの声を再現した生成AIが、Adoの楽曲「うっせぇわ」を歌う音声を聴いたと明かした。

「初めて聴いたときは目が点になりました。深いため息が漏れました。そして時間が経つにつれて怒りが増してきたんです」

驚きから、ため息、そして怒りへ。島田は気持ちが移り変わった順番を、そのまま言葉にした。

この音声を誰が作り、どこで公開していたのか。会見の報道では、投稿者や掲載先は明らかにされていない。報道で島田は、生成AIによる声の無断利用を自ら経験した一人として紹介されている。島田が問題にしたのは、本人が知らないところで声が使われたことだった。

「個人で楽しむのはいい」 島田が線を引いた場所

島田は、生成AIで遊ぶこと自体を否定したわけではない。「個人で楽しむのはいいです」と前置きしたうえで、こう訴えた。

「実演家の知らないところで言ってもいないこと、歌ってもいない歌がインターネット上に公開され、フォロワー数を稼ぎ、収益化するというのはどう考えても納得がいかない」

線を引いたのは、公開と収益化だ。手元で試す使い方と、ネットに出してフォロワーや広告収入につなげる使い方を、島田ははっきり分けて話している。

話はアニメの作り方にも及んだ。シナリオや絵、音楽が作られ、収録現場では役者同士がセリフを交わし、演出の指示を受けながら感情を表していく。島田は「アニメーションは総合芸術だと考えています」と述べ、生成AIでその一部だけを使うことについて「作品への冒涜ではないかと思います」と疑問を投げかけた。

最後は、ネットで動画を見る側、作る側への呼びかけだった。一般のユーザーにも、実演家の声を無断で使って公開することには問題があると理解してもらう。そうすれば「俳優文化が守られ、発展につながっていくと思います」と、島田は言葉に力を込めた。報道によると、島田は「声優らの声を無断で利用することは問題があると啓発していきたい」とも話している。

ブロリー役は1993年から 島田敏の歩み

島田は新潟県出身で、青二プロダクションに所属する。ブロリーとの付き合いは長い。初登場は1993年3月6日公開の劇場版「ドラゴンボールZ 燃え尽きろ!!熱戦・烈戦・超激戦」で、このとき島田がブロリーの声を担当した。

それから25年後の2018年12月、劇場版「ドラゴンボール超 ブロリー」で、ブロリーは新しい設定のキャラクターとしてスクリーンに戻ってくる。島田は引き続き同じ役を演じ、2022年の「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」でもブロリーの声を担当した。ゲームでは2024年発売の「ドラゴンボール Sparking! ZERO」などにも出演している。

ブロリー以外の代表作も多い。2010年からは「ちびまる子ちゃん」のおじいちゃん、さくら友蔵を青野武から引き継いだ。「忍たま乱太郎」のヘムヘム、「ONE PIECE」のワポルなども島田の役だ。洋画の吹き替えでは「スター・ウォーズ」のルーク(マーク・ハミル)も担当している。

叫び声の印象が強いブロリーと、穏やかな友蔵。正反対の役を演じ分け、ブロリーだけでも30年以上演じてきた声が、本人の知らないところで歌わされていた。

「うっせぇわ」はAdoのデビュー曲

AIの「ブロリー」が歌わされた「うっせぇわ」は、Adoが2020年10月23日にユニバーサル ミュージックから配信でリリースしたメジャーデビュー曲だ。作詞・作曲・編曲はボカロPのsyudouが手がけた。

デビュー時のAdoは17歳。MVがYouTubeで広がり、オリコンのデジタルシングルとストリーミングの2部門で1位を取った。オリコンの集計では、ストリーミングの累積再生数が4億回を超えている。人の声で歌われ、人の声で広まったヒット曲だった。

ガイドラインの中身 許諾・対価・多言語化・故人の声

日俳連は、約2,600人の俳優・声優が加盟する協同組合だ。今回のガイドラインでは、特に重要な課題として「事前の許諾」「対価」「多言語化」「物故者の声の利用」の4項目を定めた。

1つ目の許諾は、AIの学習、生成、公開・利用のどの段階でも、声の持ち主である実演家に利用目的を示し、事前に許諾を得ることを求める。2つ目の対価では、AIが生成した音声の利用を、新しい形での「実演の提供」と同じものと位置づけ、実演家に適切な報酬を払うべきだとした。このほか、事業者が違反したときに損害賠償を求めることも明記している。

3つ目の多言語化は、AIでセリフを別の言語に訳し、本人の声のまま吹き替え音声を作る場合のルールだ。演技のニュアンスが意図せず変わることや、契約にない地域で使われることを防ぐため、言語ごとの許諾と追加の対価を求める。

4つ目は亡くなった実演家の声だ。故人の音声のAI利用は原則として禁止する。ただし、本人が亡くなった時点ですでに制作が始まっていたシリーズの続編や、生前に出演を承諾していた企画などは、遺族らの事前の同意を条件に例外を認める余地を残した。日俳連の顧問弁護士の大久保修一は、故人の声で新しい作品を作ることは、いま活動している実演家やこれから活動する実演家の仕事の機会を奪うと説明している。

関連記事:「ドラゴンボール超 ビルス」界王様とサタンの声が戻ったのはなぜ? 八奈見乗児さん・石塚運昇さんの声が流れた仕組みを整理

法律はまだない 日俳連が求める「声の権利」

日本には、声の権利を守る法律がまだない。日俳連は、法整備を待っていては手遅れになるとして、ガイドラインを自主的な基準として作ったと説明している。

声の権利をめぐっては、9月30日に東京地裁の判決も出ている。声優の津田健次郎が、自分の声質をまねたとするナレーション付き動画をめぐり、TikTokの運営会社に削除を求めた訴訟だ。判決は、動画がすでに削除されていたとして、削除の請求を退けた。一方で、人の声は肖像と同じように個人の人格の象徴だとして、声もパブリシティー権で守られるという初めての判断を示している。

池水は会見で、ガイドラインを使った仕事の実例を積み重ねることが「法律を作ることにつながっていくと思います」と語った。動画配信のプラットフォームと無断利用者が利益の面で「お互いかばい合う場合もある」とも指摘し、「声優は声を仕事にしている。人格そのもので仕事をしているので、それを侵されるのは非常に厳しいです」と訴えた。

ビデオで参加した野沢は、AIの進歩に「私もワクワクするんです!」と期待を示しつつ、「でも、私たちの声が無断で使われているなんてね。ちょっと幻滅してしまうんですよ」と打ち明けた。佐々木は「AIが怖い、嫌いと言っているだけでは進めない」と話し、声優の仕事はなくならないと信じていると前を向いた。

日俳連は今後、ガイドラインを業界のルールとして根づかせるとともに、「声の権利」の法制化に向けて国への働きかけを強める方針だ。ブロリーの声で流れた「うっせぇわ」に目を点にした島田は、その体験をガイドライン発表の場で語り、無断で声を使わないよう一般のユーザーにも理解を求めた。

[文/構成 by エンタメライター 和泉ユウスケ]

寄稿者

和泉ユウスケ
映画とアニメのことばかり書いているライターの和泉です。Webメディアで映画レビューを書き始めて9年になりました。深夜アニメは毎クール20本前後を追いかけ、映画館には月に数回、公開初日にもよく出没します。公開日・配信日・キャスト情報は正確に、ネタバレには慎重にお届けします。

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