森岡毅氏の経歴、何がすごい? USJ再建から「刀」の挑戦まで、その手法とは

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
マーケター森岡毅氏は、経営危機にあったUSJを入場者数倍増に導きV字回復させた立役者である。その手法の核心は、徹底した「消費者視点」とデータに基づく「確率思考」。現在はマーケティング精鋭集団「刀」を率い、丸亀製麺や西武園ゆうえんちの再生、沖縄の新テーマパーク事業など、多様な業界で「マーケティングで日本を元気に」を実践し続けている。
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危機からの逆転劇、仕掛け人としての登場
2010年、年間入場者数が730万人台まで落ち込み、深刻な経営不振に喘いでいたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)。この巨大テーマパークを劇的なV字回復へと導いた中心人物が、マーケターの森岡毅氏である。P&Gでブランドマネージャーとして実績を積んだ後、当時のUSJのCEOグレン・ガンペル氏によるヘッドハントを受け、2010年6月に入社。そこから、日本を代表するマーケターとしての快進撃が始まった。
USJ V字回復の軌跡 ―「森岡メソッド」の威力
森岡氏がUSJで断行したのは、単なる小手先の改善ではなかった。それは、企業の根幹を揺るがすほどの構造的改革であった。
ブランド戦略の大転換
森岡氏は入社後、USJの集客低迷の原因を徹底的に分析。その結論は、パークが「ハリウッド映画にこだわったテーマパーク」という狭い枠に自らを閉じ込めていることだった。エンターテイメント需要全体から見れば、映画はその一部に過ぎない。この構造的欠陥を打破するため、森岡氏はブランド戦略を「世界最高のエンターテイメントを集めたテーマパーク」へと大きく転換させた。
この方針転換に基づき、社内外の反対を押し切って、人気漫画『ONE PIECE』のショーや、人気ゲーム『モンスターハンター』のイベントなど、映画以外の日本発人気コンテンツを次々と導入。この大胆な改革が、来場者数を劇的な上昇に転じさせる最初のきっかけとなったのである。
緻密な戦略「三段ロケット構想」
森岡氏の改革は、場当たり的なものではなかった。その根底には「三段ロケット構想」と呼ばれる壮大かつ緻密な戦略が存在した。
- 第一段ロケット: USJの弱点であったファミリー層の集客を強化するため、2012年に新エリア「ユニバーサル・ワンダーランド」を開設。これにより安定した収益基盤を確立。
- 第二段ロケット: 第一段で得た資金を元に、集客の「関西依存」から脱却し全国区ブランドとなるため、450億円を投じて2014年に「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」をオープン。
- 第三段ロケット: テーマパーク経営のノウハウを活かし、新パークを全国やアジアへ多拠点展開する構想。
この構想は第二段までが見事に実行され、USJの運命を大きく変えることとなる。
常識を覆した具体策の数々
戦略を成功に導いたのは、消費者の心を的確に捉えた具体的な施策であった。
ハロウィーン・ホラー・ナイト
今や日本の秋の風物詩となった仮装ハロウィーン。その火付け役の一つが、2011年に森岡氏が仕掛けた「ハロウィーン・ホラー・ナイト」である。それまでの子供向けイベントというイメージを覆し、「日頃のストレスを発散したい大人(特に若い女性)」をターゲットに設定。「大声で叫び、熱狂しても許される空間」を提供した結果、ハロウィーンシーズンの来場者数は7万人程度から40万人以上へと急増した。
ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~
2013年、限られた予算の中で話題性を創出する必要に迫られた森岡氏は、ある夜に見た夢から着想を得る。それは、既存のジェットコースターを「後ろ向き」に走らせるというアイデアだった。大きな投資をせずに既存設備を活用するこの「バックドロップ」は、社内の反対を乗り越えて実現。絶大な人気を博し、集客に大きく貢献した。
ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター
総工費450億円という巨大プロジェクトは、当初「クレイジーだ」と社内のほぼ全員から反対された。しかし森岡氏は、3つの異なるモデルを用いた精緻な需要予測を提示し、投資回収が可能であることを客観的データで証明。人口減少が進む日本市場において、関西圏への依存体質から脱却しなければUSJに未来はないと説得を続けた。
結果、2014年7月のオープン後、来場者数は過去最高の1270万人を記録。森岡氏が事前に公表していた需要予測とほぼ一致したことで、その数学的マーケティング手法は驚きをもって受け止められた。USJは狙い通り全国区のブランドへと飛躍を遂げたのである。
「刀」設立と次なる挑戦
2017年、USJを退社した森岡氏は、マーケティング精鋭集団「株式会社 刀」を設立。「マーケティングとエンターテイメントで日本を元気に」という大義を掲げ、USJで培った「森岡メソッド」を武器に、様々な企業の再建や事業創造に乗り出す。
多様な業界での実績
- 西武園ゆうえんち: 老朽化した遊園地を、1960年代の「昭和の町並み」をテーマにリニューアル。「懐かしさ」や「人情味あふれるライブパフォーマンス」がSNSで話題となり、若者やファミリー層の集客に成功した。
- 丸亀製麺: 「店舗での製麺」という既存の強みを「生きているうどん」というコンセプトで再定義し、V字回復を実現。
- イマーシブ・フォート東京: 2024年3月、東京・台場に世界初のイマーシブ(没入型)テーマパークを開業。
- JUNGLIA(ジャングリア): USJ時代に断念した沖縄でのテーマパーク構想を再始動。2025年夏、沖縄本島北部に開業予定の巨大テーマパークで、総事業費は約700億円に上る。















































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