MediaDogs

新着記事

川上拓斗審判員が意識回復、会話や食事も 家族によると本人は球場に戻って審判をしたいと願う

川上拓斗審判員が意識回復、会話や食事も 家族によると本人は球場に戻って審判をしたいと願う

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

日本野球機構(NPB)は10月16日、4月16日のヤクルト-DeNA戦(神宮)で球審を務めていた際、打者の手から離れたバットが頭部に当たって負傷した川上拓斗審判員(30)の意識が回復したと明らかにした。家族からのメッセージによると、担当医師から「意識回復と見てよいでしょう」との判断を受け、会話や食事ができるようになっている。見舞いに訪れる人には、球場に戻って審判をしたいと繰り返し話しているという。

事故から半年、家族のメッセージで伝えられた現在の容体

NPBの黒川岩人事務局次長が10月16日にオンラインで取材に応じ、川上審判員の家族から届いたメッセージを代読した。家族からの報告は6月8日以来、約4カ月ぶりとなった。

メッセージは「4月16日の打球事故から早いもので半年が経過しました」と始まる。6月の報告から時間が空いたことをわびたうえで、お見舞いや激励を寄せた人々への感謝をつづった。

容体については、医学的な見地での意識回復について担当医師から「意識回復と見てよいでしょう」と判断を受けたと説明した。続けて家族は「会話や食事ができるようになり、後遺症が全くないわけではありませんが、回復できるよう日々リハビリに取り組んでいるところです」と現状を伝えている。

後遺症の具体的な内容や、退院・審判復帰の時期は公表されていない。

家族は治療にあたる医療関係者に向けて「ここまで、関わっていただいている医療関係者の皆様には感謝しかありません」とも書いた。そのうえで、本人が見舞いに来る人たちに対し、球場に戻って審判をしたいという思いを繰り返し口にしていると明かした。メッセージは「今後も復帰を目指して治療やリハビリを継続していきますので、見守っていただけたらと思います」と結ばれ、最後に「川上審判員家族一同」と記されていた。

4月16日、神宮の8回に起きた事故

事故が起きたのは、4月16日に明治神宮野球場で行われたヤクルト-DeNA第5回戦の8回だった。ヤクルトのホセ・オスナがスイングした際にバットが手から離れ、球審の川上審判員の側頭部を直撃する。川上審判員は試合途中に救急搬送された。

NPBは翌17日、搬送先の医療機関で緊急手術が行われ、集中治療室(ICU)で治療を受けていると発表した。発表文では「本件を極めて重大な事案として受け止めており」とし、頭部の保護を含めた防護措置の在り方を関係各所と検討していく考えを示している。ファンや関係者に心配をかけていることをわび、「川上審判員の一日も早い回復を心より願っております」と結んだ。

オスナは事故の後、自身のXで、自分のバットが当たってしまったことを謝罪した。ヤクルト球団も17日に公式Xで、川上審判員へのお見舞いと早い回復を願うメッセージを出した。

4月30日、NPBは川上審判員がICUから一般病棟に移ったと発表する。ただ、この時点で意識は戻っておらず、「医療機関にて懸命な治療とリハビリを継続いたします」と説明していた。

6月8日には、NPBを通じて家族が初めて経過を報告した。治療とリハビリを続けていること、担当医師によると「まだ意識回復とまでは言えないものの」、家族や見舞いに来る人に対してまばたきで反応したり、腕を動かしたりするようになったことが伝えられた。このとき家族は、今後もリハビリや治療を続けていくとして「家族としましても共に歩んでいく所存でございます」とつづっていた。退院のめどは立っていないとされ、そこから約4カ月、新しい情報は出ていなかった。

半年かけて、まばたきの反応から会話へ。

球審のヘルメット着用と「危険スイング」の罰則

事故の2日後、プロ野球の現場はすぐに変わった。4月18日に行われた全6試合で、NPBからの指示を受けた球審がヘルメットをかぶってジャッジしている。

この日、甲子園での阪神-中日戦後に取材に応じた福家英登審判員は、NPBから安全のために速やかに着用するよう指示があったと説明した。その後、球審を務める際には頭部全体を覆うヘルメット一体型のマスクを着けるよう、NPBから審判員に通達が出ている。

打者側のルールも見直された。NPBと12球団は5月11日の実行委員会で、スイングの途中でバットを手放す行為を「危険スイング」とし、罰則を設けることを承認した。12日から2軍を含めて適用している。

罰則の中身は段階的だ。バットが他者に当たらなかった場合は警告で、同じ試合で同じ打者が2度目の危険スイングをすれば退場となる。バット全体が他者に向かって避けきれずに体に当たった場合や、ダッグアウト、カメラマン席、スタンドに入った場合は即退場になる。折れたバットやバントは対象外とされた。

オスナは5月12日の阪神戦で1軍に戻り、試合前に「ルールも適用されたので、そこも気を付けながらやっていきたい」と話している。

「29」を刻んだ審判員たちと、川上審判員の歩み

5月には、プロ野球の1、2軍の試合で審判員たちが帽子やヘルメットに「29」を付けて試合に臨んだ。29は川上審判員の袖番号だ。動きはアマチュア球界にも広がり、神宮球場で行われた東京六大学野球でも球審がヘルメットに「29」を記してジャッジした。

甲子園で試合後に取材に応じた吉本文弘審判員は「みんなで何かできることがないかということで始まった」と経緯を明かす。プロとアマの垣根を越えて、同じ審判仲間の回復を願う輪が広がった。

NPBの審判員名簿などによると、川上審判員は1996年4月15日生まれで、新潟の中越高校出身。第5回NPBアンパイア・スクールの修了生で、ルートインBCリーグの審判員を務め、2019年1月1日に育成審判員としてNPBと契約し、2022年1月1日にNPB審判員として契約を結んだ。2025年4月26日の西武-オリックス戦(ベルーナドーム)の三塁塁審で1軍に初出場し、2025年シーズン終了時点で1軍の出場は3試合となっている。4月16日のヤクルト-DeNA戦は、1軍で初めて球審を務めた試合だった。

独立リーグから一歩ずつ積み上げ、つかんだ1軍の舞台だった。

10月16日の報告で、家族は「今後も復帰を目指して治療やリハビリを継続していきます」とつづっている。後遺症が残るなかで、本人はグラウンドへ戻る日を目標にリハビリを続ける。復帰の時期は決まっていないが、半年前には意識が戻らず集中治療室にいた29番の審判員が、いま自分の言葉で審判への思いを語れるところまで来た。

[文/構成 by スポーツライター TAKU]

寄稿者

TAKU
ボールを使う競技なら何でも観ます、TAKUです。学生時代はずっとバスケ部、いまは週末にフットサル。スポーツを中心に書くWebライターになって5年です。Bリーグ、バレーボール、ラグビー、テニスを中心に、野球やサッカーも書きます。試合の流れが変わった瞬間を、スコアと一緒に伝えるのが得意です。

コメントはこちら

*
*
* (公開されません)

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

エンタメ

More

スポーツ

More

ライフハック/実用

More

グルメ

More

社会/ニュース

More

旅行/スポット

More
Return Top