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たまごっちでタッチ決済?SNSの疑問を徹底解説、10年前の先進機能「NFC」の真相

なぜNFCだったのか?開発の背景と狙い

なぜバンダイは、当時まだ玩具には珍しかったNFC技術の採用に踏み切ったのだろうか。その背景には、ターゲット層である小学生のライフスタイルの変化に対応しようとする明確な戦略があった。

小学生の「おもちゃ離れ」と「ライフツール感」の創出

2015年当時のバンダイの担当者、加藤陽子氏は「ターゲットとなる小学生の女の子のおもちゃ離れが始まっていますが、どうしたら『たまごっち』を常に携帯していただけるかを考えました」と語っている。

スマートフォンや携帯ゲーム機に興味を持ち始める子供たちに対し、単なるおもちゃではなく、街中でタッチすることで現実世界と繋がる「ライフツール感」を持たせることが狙いであった。この戦略は功を奏し、利用者アンケートでは「お世話遊び」に次いで「通信遊び」が上位にランクインするようになったという。

技術的進化とコストメリット

従来の赤外線通信では、データの送受信に専用のハードウェア(通信筐体など)が必要だった。しかし、NFCは安価なICタグで代用できるため、ポスターやPOPにタグを貼り付けるだけでタッチスポットを設置できるようになった。これにより、玩具店以外の多様な店舗へ、低コストで爆発的に設置場所を拡大することが可能となったのである。

深まる育成とコミュニケーション

「TAMAGOTCHI 4U」は通信機能だけでなく、育成要素も深化させた。お世話の仕方によって、たまごっちの見た目や性格が劇的に変化する「こせーて期」が導入された。まじめにお世話をすれば理想の姿に、サボるとグレてしまったり、食べ続けるとまんまるになったりと、プレイヤーの育て方がダイレクトに反映されるようになった。 お世話の仕方でキャラクターの個性が大きく変化する「こせーて期」。プレイヤーの育成スタイルが、たまごっちの未来を左右した。

また、NFCはユーザー間のコミュニケーションも円滑にした。「TAMAGOTCHI 4U」同士の背面を合わせるだけで、プロフィールやアイテムの交換、対戦ミニゲーム、結婚などが簡単に行えた。さらに、NFCを搭載したAndroidスマートフォンとも連携し、専用アプリ「たまごっち 4U アプリ」を介してキャラクターやアイテムをダウンロードすることも可能だった。

SNSの反応と現代における「タッチ」の誤解

今回のSNSでの話題は、10年の時を経て、この先進的な機能が新たな文脈で再発見された興味深い現象と言える。なぜ「タッチ決済」という誤解が生まれたのだろうか。

第一に、NFC技術が現代において「タッチ決済」の代名詞として広く普及したことが挙げられる。スマートフォンやクレジットカードをかざして支払いをする光景は日常となり、「タッチする」という行為が決済と直結して想起されやすくなっている。

第二に、「TAMAGOTCHI 4U」の発売から10年以上が経過し、この機能を知らない世代が増えたことだ。当時の小学生も今や成人しており、現在の子供たちや若い世代にとっては未知の機能であった。

さらに、偶然にも決済アプリ「PayPay」が2025年11月20日から「たまごっち」デザインのきせかえカードを配信していることも、一部で「決済機能と関連があるのでは」という憶測を呼んだ可能性がある。

なお、「TAMAGOTCHI 4U」および2015年発売の後継機「TAMAGOTCHI 4U+」の公式アプリは2016年9月にサービスを終了しており、現在、公式のタッチスポットは存在しない。

通信機能の変遷と未来 – たまごっちは進化し続ける

今回の騒動は、たまごっちが常に時代の技術を取り入れ、コミュニケーションの形を進化させてきた歴史を浮き彫りにした。その系譜は、赤外線通信で友達と繋がった「Tamagotchi Connection」(2004年)、NFCで街と繋がった「TAMAGOTCHI 4U」(2014年)、そしてWi-Fiを搭載し、メタバース空間「Tamaverse」で世界中のユーザーと繋がる「Tamagotchi Uni」(2023年)へと続いている。

10年前に「街中でタッチする」というリアルとバーチャルを融合させた試みは、時代を経て「タッチ決済」という新たな文脈で再発見された。お世話遊びという普遍的な核を大切にしながらも、常に新しい「つながり」の形を模索し続ける姿勢こそが、たまごっちが世代を超えて愛され続ける理由の一つなのかもしれない。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

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