Netflix配信の映画「KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ」は、K-POPアイドルが悪霊退治の使命を引き受けるというユニークなストーリーを持つ音楽アクション映画である。主要キャラクターはK-POPボーイズグループ「バーニング」のメンバーで、実際の韓国の人気アイドル(エンハイプン・リーシン、ニシムラマキ、ヘンリーロー)が声優を務めている。2025年にNetflixで公開された本作は、リリース後直ちに世界的な話題を呼び、配信開始後3日間で約4,280万時間もの視聴を記録し、Netflix公開作として歴代最大級のヒットとなった。[netflix.com]その人気は以下の図が示すように、Netflixの過去のヒット作品と比較しても際立っている。

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映画内で披露される楽曲も含め、作品全体が音楽と映像の融合によって生み出す新たなエンタメ体験を体現している。
映画が世界的ヒットとなった要因
「KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ」が世界的にヒットした要因には、大きく分けて1) 話題性とユニークな設定、2) 既存人気IPとの連携、3) SNSでのバイラル効果の3点が挙げられる。
まず話題性とユニークな設定である。映画タイトルに「K-POP」と「悪霊退治(デーモンハンター)」という一見無関係な要素を組み合わせた点自体が注目を集めた。K-POPアイドルがヒーローになるという新鮮な設定は、従来型の映画とは異なる興味を喚起し、クロスオーバー作品として話題を呼んだ。また、実在の人気アイドルが出演(声優)することで既存のファン層にも訴求でき、マーケティング面でも大きな強みとなった。実際、主要キャラクターの声優陣である韓国のエンハイプンなどは海外にも多くのファンを抱えており、彼らの名前が映画タイトルに冠されたことで「必見だ」という期待感をファンに与えたと考えられる。
次に既存人気IPとの連携である。本作はNetflixが2022年に公開した実写映画「KPOPガールズ!」(実在のK-POPガールズグループ「TWICE」が出演)の続編として位置付けられている。前作が一定の支持を得ていたことから、シリーズ作としての親和性により観客動員が見込めた。Netflixはこのように人気シリーズやIPの継続作・スピンオフを積極的に制作しており、「既に好きなブランドにつながる作品」は視聴者が試してみようとする可能性が高く、視聴率向上に寄与する。実際、Netflixの過去の成功例でも「ブリッジトン」のスピンオフや「ウェディング」シリーズなど、フランチャイズ展開が視聴者の継続的な関心を呼び、離脱防止につながったと分析されている。「KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ」も前作のファンを取り込みつつ、新規視聴者にもアピールするバランスをとったプログラミングと言える。
さらにSNSでのバイラル効果も見逃せない。Netflixは近年、新作公開時にTikTokやInstagramなどのSNSで話題を作るマーケティングを駆使している。例えば本作では、映画内の楽曲「Golden」の一部を使った短いダンス動画がTikTok上で拡散され、ユーザーが自ら踊りながら参加できるコンテストが展開された。この企画にはNetflix公式アカウントが積極的に参加しており、投稿動画では「#KpopDemonHunters」「#Golden」といったハッシュタグが付けられることで話題を一層拡大している。実際、映画公開直後からTikTok上で「#KpopDemonHunters」関連の投稿が急増し、楽曲「Golden」もSNSでの再生回数が爆発的に伸びた。このようにSNS上でのバイラルマーケティングが、映画の認知拡大と視聴誘発に大きく寄与したのである。
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