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「約束」は爆発した。興収54億円『チェンソーマン レゼ篇』が描く、美しくも残酷な青春

© 2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト

© 藤本タツキ/集英社

劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が公開から24日で観客動員355万人、興行収入54億円を突破した。配給元の東宝が本日10月13日に発表した数字で、週末の勢いをそのままに大台へ到達。公開初日(9月19日)の時点で動員27.2万人/4.2億円超、初週末3日間は80万7千人/12.51億円で初登場1位だった流れを裏づける結果である。話題作がひしめく秋興行で、看板の一本になったのは間違いない。

レゼ篇が映す「甘美で残酷」青春の輪郭はこうして立ち上がる

原作は藤本タツキの人気漫画『チェンソーマン』。テレビアニメに続く本作は、通称「ボムガール編」ことレゼ篇を映画化した。監督は吉原達矢、脚本は瀬古浩司、制作はMAPPA。PG12指定で、繊細な色気と容赦ない暴力が交錯する作風をスクリーンの解像度で押し出した。物語の駆動力は、雨宿りで出会ったデンジとレゼの約束であり、その約束が破裂音のように運命を変える。終盤に響く「デンジくん、ごめんね」という一言は、観客の胸に長く残るはずだ。

映像演出の“体温”をさらに上げているのが音楽だ。主題歌は米津玄師「IRIS OUT」。エンディングテーマは米津玄師×宇多田ヒカル「JANE DOE」というコラボで、劇中挿入歌にはマキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ(全体推定70%解禁edit)」が差し込まれる。公開当日には「JANE DOE」を用いた公開記念PVが解禁され、X(旧Twitter)でも広く拡散した。耳に残る余韻が、甘美で残酷な青春譚に輪郭を与える。

ヒットの下支え。体験設計×フォーマット×入場者特典

動員を押し上げたのは「映画館で観る理由」を明確にした体験設計だ。10月4日からはMX4D・4DX・Dolby Cinemaの拡張上映が順次スタート。各地ではIMAX上映も実施され、音と画の圧で“刃”の質感を体感できる。0時最速上映や舞台挨拶の同時中継も重ね、イベント色を打ち出した。観る時間・場所を選ぶ楽しさが、SNSでの語りを生んだ格好だ。

プロモーションのもう一つの軸が入場者特典だ。第1弾の小冊子『恋・花・チェンソー・ガイド』、第2弾のミニ色紙風カードに続き、第3弾のビジュアルカードが告知されている。原作ファンの“収集欲”と映画鑑賞の動機を地続きにする設計で、週替わり配布が再来館を促す。

SNS上では、公開後PV(レゼが“ボム”へと変身するシークエンス)やED曲の相性に言及するポストが目立ち、公式アカウントの投稿が軒並み高いエンゲージメントを得た。東宝や公式Xの「公開記念PV」投稿は、アイキャッチとしても強い視覚情報になっている。一方で、「暴力描写は強め」という指摘も散見される。PG12指定の周知は引き続き重要だ。

次の焦点は..海外公開と“ロングラン”の可能性

海外は9月下旬からアジアを皮切りに公開が進行中で、欧米は10月下旬の劇場公開スロットに入る。いまの日本での推移を踏まえると、入場者特典の切り替えや拡張上映の継続がカギ。国内の上映フォーマットが広がった10月上旬は、前週比で伸長する週もあった。連休やハロウィーン商戦に合わせた施策がロングランの分岐点になるだろう。

海外での初動がどこまで波及するか。デンジとレゼの“あの雨”は、言語を超えて届く普遍性がある。一方で、物語が突きつける“選べない痛み”は人を選ぶ。美しさと残酷さの共存。その緊張を保ったまま、どこまで観客層を広げられるかが次の論点である。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

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