仙台育英サッカー部・城福敬監督、これまでの経歴。選手権辞退、ラストイヤーの悲劇

2025年11月12日、サッカー界に衝撃が走った。全国高校サッカー選手権の宮城県大会を制したばかりの強豪・仙台育英高校が、全国大会への出場を辞退すると発表したのだ。理由は、部内で発覚した「いじめ重大事態」。16年にわたりチームを率い、今季限りでの退任を表明していた城福敬監督の「ラストイヤー」は、有終の美とはほど遠い、あまりにも悲しい結末を迎えた。
「サッカー部全体、顧問団ならびに生徒の人権意識が不十分なために、『構造的いじめ』を生じさせ、これを見逃してしまう体制であったことが明らかになりました」
歓喜から10日、悲劇の幕切れ
時計の針を少し戻そう。11月2日、第104回全国高校サッカー選手権宮城県大会決勝。仙台育英は宿敵・聖和学園を2-1で下し、2年ぶり38回目となる全国大会への切符を手にした。試合後のインタビューで、城福敬監督は「今年がラストイヤーです」と公言。徳島から駆けつけた妻の前で、見事に全国出場という花道を飾ったかに見えた。
しかし、その歓喜の裏で、事態は静かに、しかし深刻に進行していた。優勝からわずか2日後の11月4日、一部メディアが部内での「いじめ重大事態」を報道。学校側は5日に事実関係を認め、調査を進めていることを公表した。そして12日、学校は「構造的いじめ」があったと結論づけ、全国大会の出場辞退を発表。サッカー部は12月末までの対外活動停止という重い処分を受けることになった。
城福敬監督とは何者か?
教育者としての横顔と指導哲学
16年間にわたり仙台育英を率いてきた城福敬監督は、単なるサッカー指導者ではない。徳島県に生まれ、徳島県立城北高校から早稲田大学教育学部に進学。卒業後は教員としてキャリアをスタートさせた経歴を持つ。その根底には、常に「教育者」としての一面があった。
彼の指導哲学は「勝利至上主義」とは一線を画す。「考えてプレーする選手」の育成を掲げ、選手の自主性や自立を促すアプローチは、他の指導者からも高く評価されてきた。部員150名を超える大所帯をまとめ上げ、全国屈指の強豪に育て上げた手腕は確かだ。一方で、プロの世界にも精通しており、過去には川崎フロンターレのスカウト部長やコンサドーレ札幌の強化部長を歴任した経験も持つ。
Jリーグを知る「兄弟監督」
城福家は、日本のサッカー界で知られた存在だ。実弟は、現在J1・東京ヴェルディを率いる城福浩監督。兄・敬が高校サッカーの育成年代で手腕を振るう一方、弟・浩はFC東京やサンフレッチェ広島などで監督を歴任し、Jリーグの舞台で数々の実績を残してきた。
二人の指導哲学には共通点も見られる。弟・浩監督が「ムービングフットボール」を掲げ、選手が連動して動くサッカーを志向したように、兄・敬監督も「考えて走るサッカー」を信条としてきた。兄弟そろって、選手の思考力と主体性を重視する指導者として、それぞれの舞台で日本サッカー界を支えてきたのである。
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