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なぜ、彼はブレないのか? ビートたけしが 生涯感謝し続けた 母さきとの 壮絶な絆と教え

なぜ、彼はブレないのか? ビートたけしが 生涯感謝し続けた 母さきとの 壮絶な絆と教え

「世界のキタノ」こと、ビートたけしさん。

映画監督として、タレントとして、その言動は常に世間の注目を集めます。時に物議を醸しながらも、彼の姿勢には一本、決して揺らぐことのない太い芯が通っているように見えます。その強さの源泉は、一体どこにあるのでしょうか。

多くの関係者やファンが口を揃えて語るのは、1999年に亡くなった母・さきさんの存在です。それは単なる「教育熱心な母親」という言葉では片付けられない、まさに「壮絶な絆」と呼ぶにふさわしい物語でした。

「貧乏は循環する」― 魂に刻まれた母の教え

北野家は、たけしさんの著書『菊次郎とさき』でも描かれている通り、決して裕福ではありませんでした。ペンキ職人の父・菊次郎さんの稼ぎは少なく、母・さきさんは内職で家計を支える日々。そんな中で、さきさんが子どもたちに繰り返し説いたのが、教育の重要性でした。

「貧乏は循環するんですよ。貧乏人は金がない。金がないから学校に行けない。学校に行けないからろくな仕事に就けない。…こんなこといっちゃ、お釈迦様が怒るかもしれないけど、貧乏ばかりが輪廻する」

この言葉は、さきさん自身の壮絶な人生から生まれたものでした。幼くして両親を亡くし、奉公に出た経験から、「貧しさの連鎖」を断ち切るには教育しかないと痛感していたのです。

NHKの番組「ファミリーヒストリー」では、彼女が子どもたちに「勉強しろ!」と厳しく言いつけた背景が明かされています。

「お金はどんなにあっても人に取られたり無くなったらおしまいだが、教育というのはどんなに人が取ろうと思っても取れない」。

この「武士の精神」にも似た教えは、たけしさんの金銭に執着しない価値観や、物事の本質を見抜く洞察力の礎となったのかもしれません。

誤解された金銭要求と、涙の真相

たけしさんが売れっ子芸人になると、さきさんからの「金の無心」が始まります。会うたびに理由をつけては「金をくれ」と要求する母に、たけしさんは「吸血鬼みたいだ」と呆れながらも、言われるがままに仕送りを続けていました。

しかし、物語はさきさんが亡くなった後に、衝撃的な結末を迎えます。葬儀の後、兄の大さんから手渡された小さな包み。中に入っていたのは、たけしさん名義の郵便貯金の通帳でした。そこには、これまで仕送りしてきたお金が、一円も使われることなく貯金されていたのです。

「見舞いの時におもむろに袋渡されて、中にせびられたはずのお金全部貯金してある通帳が入ってたの。母ちゃんには一生かなわねぇな、って書いてあった。」

一見するとただの金銭要求。しかしその裏には、息子が稼いだ大金を散財させず、万が一の時のために貯めておくという、母の深すぎる愛情が隠されていました。

このエピソードは、愛情の形は決して一つではないこと、そして表面的な言動だけでは計り知れない親心を、私たちに教えてくれます。

「死刑にでもしてください」― 危機で見せた究極の愛

この親子の「壮絶な絆」を最も象徴するのが、1986年の「フライデー襲撃事件」でのさきさんの対応でしょう。たけし軍団を率いて講談社に乗り込んだ息子は、世間から激しいバッシングを受けます。当然、マスコミは足立区の実家にも殺到しました。

そこで記者たちに囲まれたさきさんが放った言葉は、誰もが耳を疑うものでした。

「あんなどうしようもないのは、死刑にでもしてください」

世間は「さすがの母親も匙を投げたか」と受け取りましたが、真意は全く逆でした。これは、これ以上騒ぎが大きくならないよう、過熱する報道を鎮めるための、母・さきさんの“命がけの知恵”だったのです。

身内が最も厳しい言葉を口にすることで、他人がそれ以上、息子を責める余地をなくす。まさに究極の防衛策でした。

兄の北野大さんは、当時の母の様子について「でも、裏じゃ違っていたんですよ。バイク事故の時は、神奈川の寒川神社まで祈願しに行ってたんです」と証言しています。

表では厳しく突き放し、裏では息子の無事を必死に祈る。これこそが、北野さきという人物の愛情表現だったのです。

ブレない強さの源泉にある「愛情の貯金」

ビートたけしさんのブレない強さ。それは、母・さきさんから受け継いだ「貧乏に負けない品性」や「学ぶことの重要性」という確固たる信念、そして、あの通帳に象徴される「愛情の貯金」によって支えられています。

親子の関係は、時に複雑で、すれ違い、誤解を生むこともあります。しかし、その根底に流れる深い愛情は、人が生涯をかけて立ち向かう困難を乗り越えるための、何よりの力になるのかもしれません。

さきさんが遺した数々の言葉と行動は、時代を超えて私たちの胸に響きます。

あなたにとっての「原点」とは何ですか? そして、あなたを支える「愛情の貯金」は、どこにありますか?

たけしさんとさきさんの物語は、そんな普遍的な問いを、私たち一人ひとりに投げかけているようです。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

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