「高円寺へ遊びに行こうよ!」杉並区など東京都に住んでいると友人との会話でよく登場する、駅名としての「高円寺」。古着屋さんや個性的なカフェが立ち並ぶ、賑やかな街を思い浮かべる方がほとんどではないでしょうか。
「高円寺」は駅名や地名としての認知度が高い。ですが実は…駅名の由来ともなった『高円寺』というお寺があるというのをご存知ですか?
これを聞いて「えぇ、お寺が本当にあったの?」と驚かれる方も多いのです。
高円寺駅から歩いてわずか7分ほどの場所。あの徳川将軍家ともゆかりの深い、歴史と緑に包まれた素晴らしいお寺が静かに佇んでいました。
今回は、実際に訪れて感じた「宿鳳山 高円寺(しゅくほうざん こうえんじ)」の魅力をお伝えします。
駅名の由来にもなった「宿鳳山 高円寺」とは?
まずはじめに、このお寺の基本情報から。正式名称は「宿鳳山 髙圓寺」。曹洞宗のお寺で、その歴史は古く、弘治元年(1555年)に開かれたとされています。

高円寺では御朱印は授与されていないそうです。
現在の「高円寺」という地名は、このお寺の名前に由来しているんです。
将軍・徳川家光との意外なつながり
このお寺が広く知られるようになったきっかけは、江戸幕府三代将軍・徳川家光との出会いでした。鷹狩りの途中で雨宿りのために立ち寄った家光を、当時の住職が将軍と知らずに、ごく自然にもてなしたそうです。そのさりげない心遣いを家光が大変気に入り、以来、鷹狩りのたびに休息所として利用するようになったのだとか。
家光は、それまで「小沢村」と呼ばれていたこの地を、寺の名にちなんで「高円寺村」と改めさせたと伝えられています。一人の住職のおもてなしが、地名を変えるほどの大きな影響を与えたなんて、なんだかドラマチックですよね。
【体験レビュー】賑やかな街の奥に広がる、静寂と緑の別世界
JR高円寺駅の南口から商店街を抜け、少し歩くと、街の喧騒が嘘のように静かなエリアに入ります。周辺にはいくつかお寺がありますが、その中でもひときわ立派な構えを見せるのが「高円寺」です。
風格ある山門と、緑のアーチ
まず目に飛び込んでくるのは、堂々とした山門。

ここをくぐると、空気が変わるのが肌で感じられます。参道は木々が美しく生い茂り、まるで緑のアーチのよう。

私が訪れたのは日差しの強い日でしたが、豊かな木陰が天然の日傘となり、とても涼しく感じられました。これなら真夏でも気持ちよく散策できそうです。
「駅の名前になるだけあるなぁ…」
思わずそんな言葉が漏れてしまうほど、手入れの行き届いた境内は風格に満ちています。敷地も周辺のお寺と比べてかなり広く、ゆったりとした時間が流れていました。
夏でも涼しい、苔むした境内
特に印象的だったのは、境内のいたるところで見られる見事な苔。しっとりとした緑の絨毯は、都会にいることを忘れさせてくれるほどの美しさです。度重なる火災で古い建物の多くは失われたそうですが(現在の本堂は昭和29年(1954年)の再建)、この豊かな自然が、お寺の長い歴史を静かに物語っているように感じました。

境内は苔むした風情が美しく、とても趣があります。
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