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「歯が眼になる」ってどういうこと?患者の視力回復に成功した“トゥース・イン・アイ”手術に驚きの声

カナダで20年以上も視力を失っていた男性が、自身の「歯」を目に移植する手術を受け、再び世界を見ることができるようになった。この驚異的なニュースは、医療の可能性と進歩を浮き彫りにし、私たちに強い驚きを与えた。

20年間の闇と、再びの光

カナダに住むブレント・チャップマン、34歳。彼の人生は13歳の時に一変した。風邪薬の重い副作用で全身に火傷を負い、片目を失い、もう片方の視力もほとんど失ってしまったのだ。CNNの報道によると、彼はその後20年間で50回近い角膜移植手術を受けたが、視力が安定することはなかったという。

しかし、2025年、彼の人生に再び光が差し込んだ。ブリティッシュコロンビア大学のグレッグ・モロニー臨床准教授が執刀した「オステオ・オドント・ケラトプロスセシス(OOKP)」、通称“トゥース・イン・アイ”手術によって、彼の視力は劇的に回復した。

手術後、視力が鮮明になった瞬間について、チャップマンは「本当に言葉では言い表せない。街全体が見えて、まったく別の世界がそこにあるようだった」と語っている。

The Independentの取材では、彼が 20(フィート)/30(フィート)の視力(日本の視力検査でいうと およそ0.7程度。正常な視力1.0の人が 約9メートル 先で見えるものを、彼は 約6メートル 先で見分けられるレベル)まで回復したと報じられている。

SFではない「歯が眼になる」仕組み

「歯を目に入れる」とは、一体どういうことなのだろうか。この手術は、患者自身の歯と骨を使って、人工レンズを支える土台を作るという画期的なものだ。

手術は大きく2段階に分かれる。Wikipediaの解説によれば、まず患者の犬歯などを骨の一部と一緒に取り出す。それを薄い板状に加工し、中心に穴を開けてプラスチック製のレンズをはめ込む。この「歯とレンズの複合体」を、一時的に患者の頬の内に埋め込むのだ。これは、複合体に新しい血管をまとわせ、体の一部としてなじませるための重要なステップである。

数カ月後、第2段階の手術が行われる。頬から取り出した複合体を、準備しておいた眼球にしっかりと縫い付ける。なぜ歯を使うのか?この疑問に対してモロニー医師は「歯は硬く、劣悪な環境でも生き残り、そして何より自分の体の一部だから体が受け入れてくれる」と説明する。つまり、他人の角膜を使う移植と違い、拒絶反応のリスクを最小限に抑えられるのが最大の利点なのだ。

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