2025年8月26日(日本時間)、米ロサンゼルスのドジャースタジアムが、野球ファンの歓声とは質の異なる、熱狂的な叫び声に包まれた。マウンドに立ったのは、世界的人気グループBTSのメンバー、V(本名キム・テヒョン)。彼が投じた一球は、単なるセレモニーにとどまらず、ドジャース球団の巧みなマーケティング戦略と、韓流文化のさらなる浸透を象徴する出来事として、大きな注目を集めている。
異次元の熱狂、スタジアムを揺るがした「V効果」
Vが始球式に登板するというニュースは、発表直後から絶大な影響力を示した。チケット再販サイトStubHubによると、発表後にドジャース対レッズ戦のチケット売上が一夜にして5倍に跳ね上がり、ドジャースはこの週、MLBで最も検索されたチームとなった。。これは、彼のファン層がいかに巨大で、行動的であるかを如実に物語っている。
試合当日、BTSのヒット曲「MIC Drop」が流れる中、背番号「7」のユニフォームをまとったVが登場すると、スタジアムの雰囲気は一変。左腕から放たれたボールは、捕手を務めた山本由伸投手のミットに見事なストライクとして収まった。野球ファンからも「素晴らしい投球」と称賛の声が上がるほどのパフォーマンスは、SNSを通じて瞬く間に世界中へ拡散された。
MLB公式YouTubeチャンネルが公開したVの始球式の様子。
ドジャースの野球ファン以外を巻き込む新戦略
マーケティング戦略:新たなファン層の開拓
ドジャースがVを起用した背景には、明確なビジネス戦略が存在する。それは、従来の野球ファンだけでなく、K-POPに熱狂する若者や女性といった新たな顧客層を取り込むことだ。ドジャースは以前から「コリア・ナイト」といった文化イベントを積極的に開催しており、韓国系コミュニティとの関係を深めてきた。今回のVの起用は、その戦略をグローバルなK-POPファン層へと一気に拡大させる、まさに「次の一手」であった。
マーケティングの専門家は、この動きを「野球に興味のない層への最も効果的なアプローチ」と分析する。K-POPスターが持つメディア価値(EMV)は莫大であり、球団は最小限のコストで最大限の宣伝効果を得ることができる。今回の始球式は、スポーツとエンターテインメントの融合がもたらす相乗効果を、見事に証明した形だ。
日韓スターの共演という付加価値
このイベントの価値をさらに高めたのが、ドジャースに所属する大谷翔平選手との対面だった。試合前、ベンチ裏でVと大谷選手が笑顔でハグを交わす姿は、日米韓のメディアで大きく報じられた。野球界と音楽界、それぞれの頂点に立つ2人のスターの交流は、ファンにとって夢の共演であり、この日の話題性を何倍にも増幅させる結果となった。
ファンの反応と「7」の奇跡
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