テレビ東京の金曜深夜。この時間帯のドラマが、今、社会的な関心を集めている。7月から放送中のドラマ24「40までにしたい10のこと」である。放送のたびにX(旧Twitter)でトレンド入りし、見逃し配信サービスTVerでは常にランキング上位をキープ。
特筆すべきは、その熱狂が従来のボーイズ・ラブ(BL)ファン層にとどまらず、これまで同ジャンルに馴染みのなかった層にまで爆発的に広がっている点だ。なぜこのドラマは、これほどまでに多くの人の心を掴むのか。その理由を多角的に分析する。
キャストの化学反応が生んだ「普遍的な物語」
ヒットの最大の要因は、主演の風間俊介と相手役の庄司浩平が織りなす絶妙な化学反応にあるだろう。10年以上恋人がいない“枯れた”アラフォー上司・雀(すずめ)を演じるのは、芸歴28年の実力派、風間俊介。彼の安定した演技は、作品に確かな説得力と深みをもたらしている。
一方、10歳年下のクールなイケメン部下・慶司(けいじ)役の庄司浩平は、その長身とミステリアスな雰囲気で新鮮な魅力を放つ。この「ベテランの安定感」と「新星の輝き」という対照的な組み合わせが、単なるBLという枠を超え、年齢や立場を超えて惹かれ合う人間の普遍的な恋愛ドラマとして、視聴者の共感を呼んでいるのだ。
「BL」のイメージを更新する演出とストーリー
原作は累計発行部数75万部を誇るマミタ氏の人気漫画だが、ドラマ化にあたっての脚色も成功の鍵を握る。
過度な性的描写を避け、登場人物たちの心の機微や、もどかしい距離感の変化を丁寧に描くことに注力。これにより、BL作品にありがちなハードルを取り払い、誰もが楽しめるピュアなラブストーリーとして昇華させた。
丁寧な心理描写と共感を呼ぶリスト
物語の軸となる「40までにしたい10のことリスト」の内容も秀逸だ。「千疋屋のパフェを食べる」「オーダーメイドの枕を作る」といったささやかな願いは、視聴者が自身の日常と重ね合わせやすい。
このリストを二人で叶えていく過程は、単なるイベント消化ではなく、互いの内面を知り、心を近づけていくための重要な装置として機能している。結果として、視聴者は二人の恋の行方を、まるで親しい友人のことのように見守ることになる。
次のページへ:SNSが熱狂を加速させる増幅装置に
コメントはこちら